個人間カーシェアで国内最大手の「Anyca(エニカ)」。会員数は25万人と限定的だが、そこに集まる人たちの熱量は高い。クルマを愛するユーザーとドライバーをつなぐビジネスは、いかにして生まれ、拡大してきたのか。神戸大学大学院の栗木契教授がその手法に迫る——。
国内最大25万人の会員を集める
「若者のクルマ離れ」が指摘されて久しい。だが、それは本当だろうか。ハイエンドのクルマに対して、「いつかハンドルを握りたい」と憧れを抱く若者は相当数いるのではないか。そしてシェアリングエコノミーを活用すれば、それはビジネスになるのではないか。
こうした仮説に基づき、DeNAが個人間カーシェアのプラットフォームを立ち上げている。その試行錯誤のプロセスとそこから広がる可能性を紹介したい。
Anyca(エニカ)は、DeNAが立ち上げたカーシェアのプラットフォーム事業である。2019年にDeNAとSOMPOホールディングスの合弁会社であるDeNA SOMPO Mobility(ディー・エヌ・エー ソンポ モビリティ)が設立され、エニカの運営にあたっている。
現在、国内には、大別すると2つのタイプのカーシェア・サービスがある。第1は、企業が所有する車を貸し出すタイプで、タイムズカーシェアやオリックスカーシェアなどが代表的である。第2は、個人間で自家用車を共同利用するシェアリングである。エニカは後者のタイプであり、自家用車の有効活用を考えるオーナーと、利用したいドライバーとのマッチングを行う。
とはいえ、この第2のタイプのカーシェアは、日本ではまだマイナーな存在である。そのなかにあってエニカは、個人間のカーシェアでは国内最大のプラットフォームとなっており、25万人の会員を擁する。だが、そこにいたる道のりは平坦ではなかった。