SNSがブランドコミュニティ・サイトの役割を変えた
インターネットの登場は、ブランドコミュニティをマーケティングに活用する企業の動きを活性化した。ブランドコミュニティとは、特定のブランドへの関心を共有するファンやユーザーたちが集い、情報の取得や思いの共有を深める共同体である。
インターネットの利用が広がるなかで注目を集めたのは、企業が人気ブランドのコミュニティ・サイトをウェブ上に設け、会員を集めることから、大規模な情報発信の場が構築されることだった。事業会社がマスメディアに匹敵する情報発信力を手にする可能性として期待されたのである。
しかし2010年代になりウェブ空間では、新たな動きが進む。スマホとSNSの利用が広がり、そのなかで人々のウェブ空間での時間の過ごし方も変化していく。コミュニティ・サイトを訪れて交流するのではなく、SNSでつながり合い、移動時間の隙間なども利用しながら、絶えず情報を交換し合う動きが広がる。
これは企業にとっては、ポイントの付与や、ゲームなどのエンターテインメントの提供によって多くの会員をサイトに集めなくても、SNSを活用すれば、多くの消費者とダイレクトにつながることができる時代を迎えたということ意味した。コスト・パフォーマンスにおいて、ブランドコミュニティ・サイトを大規模な発信に情報活用する利点は低下していったのである。
とはいえ、SNS時代にあってもブランドコミュニティ・サイトの運営を続ける企業は少なくない。神戸大学MBAにおける学生たちのプロジェクト研究によれば、そこでは情報発信のメディアとは異なる役割をブランドコミュニティ・サイトは担うようになっている。
今回取り上げる「じゃがり校」は、多数に向けた情報発信のメディアではなく、ユーザー参加型の新製品やプロモーションの開発の場として活用されている。これはSNS時代に適合したブランドコミュニティの用い方だといえる。