一度目は失敗、二度目の起業に挑む
個人が企業から仕事を受注するにはどうすればいいか。いまは「クラウドソーシング」というサービスがある。ウェブ上のプラットフォームを使って、仕事を発注したい企業と、仕事を受注したい個人をつなげるものだ。
クラウドソーシングの歴史はまだ新しい。2011年に起業したクラウドワークスという会社は、日本における元祖のひとつである。売上高は年々拡大しており、2014年には東証マザーズへ上場。現在、年間の総契約額は100億円を超える。
ただし、まったく新しいサービスのため、注目度に対して、事業が軌道に乗るまでは時間がかかった。売上高は伸びていたが、営業利益は上場以来、赤字続きだった。それもようやくめどがつき、直近の18年9月期には2300万円の営業黒字に転換している。
クラウドワークスの創業者である吉田浩一郎氏が、クラウドソーシングという事業の形態を知ったのは2011年。すでに当時、アメリカなどでは同種のプラットフォームが立ち上がっていた。このことをサイバーエージェント・ベンチャーズ社長(当時)だった田島聡一氏から吉田氏は聞き、フリーランスの個人がウェブでつながり、社内にいる社員と同じようにチームで働く時代がはじまっていると感じた。
実はこの時期、吉田氏は失意の底にあった。吉田氏は大卒後、複数の企業で勤めた後、2007年に一度目の起業を果たした。この企業はアパレル商品の販売を中心に幅広い事業を行っていたが、ベトナムで開始した事業の不振、そして部下の退社などが相次ぎ、2010年には経営を続けることができなくなっていた。
その後の吉田氏の二度目の起業が、クラウドワークスだったのだ。
いかにして吉田氏は、クラウドワークスを立ち上げるに至ったか。そして拡大していったか。以下では、吉田氏の起業を、起業家研究の第一人者であるバージニア大学教授のS.サラスバシ氏がまとめた「エフェクチュエーションの5つの行動原則」に沿って検証してみる(図表1)。なおエフェクチュエーションの詳細については後述する。