あなたはどんな人なら「家事代行」を頼みたいだろうか。2014年に創業した家事代行サービス「タスカジ」の場合、サービス拡大の契機となったのは「日本語があまり得意ではない外国人」を集めたことだった。なぜ日本人より外国人など海外出身者が人気となったのか。背景には「ほどよい距離感」という付加価値があった――。
タスカジという社名には、「助ける家事」「助かる家事」という意味が込められている。写真は同社HPより。

社名の由来は「助ける家事」「助かる家事」

日本は今、女性が生涯、外で働く社会への転換期にある。この転換をスムーズに進めるには、家庭生活を支えるスキルの市場化(家事の外注化)が必要である。これを受けて、家事代行サービスの市場が活性化し始めている。

マーケティングにおいてセグメンテーション(細分化)の発想が重視されるのは、市場は一様ではないからである。市場が拡大するとともにセグメンテーションが進む。家事代行サービス市場においても、同様の現象が見られる。この棲み分け競争のダイナミズムを、インターネットを活用した家事代行プラットフォームであるタスカジを実例として検証してみよう。

この連載では以前、類似のプラットフォームであるエニタイムズを取り上げた(<6割が男性「家事シェア」が当たったワケ>2018年7月31日)。タスカジもまた女性起業家が手がける生活スキルのマッチング・プラットフォームである。エニタイムズがオープンした翌年の2014年にプラットフォームを開設した。当初のタスカジは、家事サービス提供を行う登録者が50人ほどの小さなコミュニティだった。しかし現在ではその数は1300人にまで増加している。

タスカジという名前には、「助ける家事」「助かる家事」という意味が込められている。「TASKAJI」とアルファベットで書くと最初の4文字が「task(仕事)」となるので、海外出身者にも何のサイトであるかが伝わりやすい。

「家事をだれが担当するか」が解決されていない

さて日本の社会は、労働力人口の減少がもたらす経済成長の鈍化を、どのように乗り切ろうとしているか。現政権の主要政策のひとつがは、女性の活用(労働力化)である。

たしかに多くの女性が、生涯にわたり家庭外で、フルタイムで働き続けるようになれば、仮に労働力人口が半減したとしても、当面の日本経済の成長余力は維持される。

では個々の家庭にあって、家事を誰がどのように担当するか。料理に買い物、掃除に洗濯、場合によっては庭の手入れ。家事は大変だ。所得が増えても、家のなかがほったらかしでは、本末転倒ではないか。

1時間2000円、月2万円から家事代行を頼める

海外ではどうか。欧米だけではない。シンガポールや香港をはじめ、女性の社会進出が進む国や地域では、家事や生活スキルの外注化が進んでいるという。

「でも、家政婦さんに毎日来てもらうというのもちょっと……。うちは富裕層ではないし……」。料金を考えると、日本の普通の家庭が家政婦サービスを利用することは難しい。しかし、こうした話も過去のものとなりつつある。