精密機器メーカーのコニカミノルタの欧州事業が好調だ。リーマン・ショック後の2010年頃には2150億円ほどにまで落ち込んでいた欧州事業の売上高だが、その後7年ほどで3800億円を超える水準にまで拡大している。神戸大学大学院の栗木契教授は「後追いの市場でも、やり方次第では勝てる。経営資源の価値を見直す『リポジョショニング』の好例だ」と指摘する――。

海外での存在感が、日本で知られていない

日本企業のグローバルな活躍は、意外に日本において知られていない。ビジネスの重心を海外に移してしまった日本企業の存在感は、当然ながら国内においては弱くなる。コニカミノルタも、そのような企業のひとつといえる。

コニカミノルタは、変化のやまない2010年代のヨーロッパの市場環境のなかで、マーケティングの舵を巧みに切り、着実にその地歩を固めてきた。同社が独自の販売体制の価値を、そのときどきに応じて引き出してきた歩みは、リポジショニングの優れた事例といえる。

リポジショニングとは、製品やサービスをはじめとする、マーケティング上の各種のリソースについて、その価値やターゲティングを見直す取り組みである。この取り組みは、コニカミノルタの主力製品であるカラー複合機などの産業財の分野においても、市場の変化を受けとめるうえで重要である。

本稿では、コニカミノルタのヨーロッパ市場でのマーケティングを例にとり、リポジョショニングの役割、そしてその活用には、プロジェクトの節目節目で上位の目的にさかのぼってリソースの役割を確認する必要があることを指摘する。

今では売上高の8割以上を海外で稼ぐ

コニカミノルタは、2003年に旧コニカと旧ミノルタが合併することで生まれた。これは、複写機・複合機事業の強化をねらいとした経営統合だった。

2018年度のコニカミノルタの連結売上高は1兆0591億円、営業利益は624億円である。現在では売上高の8割を海外で稼ぐようになっており、同社の最大の市場はヨーロッパである。リーマン・ショック後に落ち込んだ売り上げも、2010年代に入り回復基調にある。これをリードしてきた市場がヨーロッパである。

複写機・複合機は、グローバルに見て、日本企業が強い産業である。ヨーロッパ市場でも売り上げの上位には日本企業が並ぶ。そのなかにあってコニカミノルタの発足時の地位は、リコー、キヤノンに次ぐ第3位だった。

ところが2010年代に入る頃から、ヨーロッパにおいてコニカミノルタの躍進が始まる。2013年には複合機の出荷台数でのシェアトップに躍り出、以降この地位をリコーと激しく争うようになる。