複写機にITサービスを重ね売りする「ハイブリッド販売」

コニカミノルタは、この問題を見据えて、2010年代初頭より、欧米で新たな企業買収を進め、ITサービスを提供する体制を整えていった。コニカミノルタはこの時期に、先のMPSと直販体制の組み合わせによって、得意のデジタル・カラー複合機の販売攻勢をかけていたのだが、次の矢の備えも行っていたのである。

コニカミノルタは、2010年代のヨーロッパで直販体制の拡充を進める際に、広域の統一的なサービスの提供を重視して、買収後の統合が容易な中小のディーラーの獲得を進めていた。この直販体制は、グローバル大企業へのMPS提供に大いに強みを発揮したが、一方でこれらのディーラーのもともとの顧客は、規模の小さなローカル企業が多かった。

2010年代に入るとこうしたローカル企業のあいだでも、IT関連の機器やアプリケーションやライセンスなどの統合管理、ドキュメント管理を含むワークフローソリューション、そして会計や顧客管理などのシステムの重要性が高まっていく。

しかし、大手ITサービス企業は一般に、中小の企業をきめ細かく回り、販売とサービスを行う体制をもたない。

では、コニカミノルタはどうか。複写機・複合機は、中小の企業のオフィスにも浸透している。そして直販体制の拡充にあたってコニカミノルタは、こうした中小の企業を顧客基盤とする現地ディーラーを、ヨーロッパにおいて買収していたのである。加えてコニカミノルタは、中小の企業を顧客基盤とするITサービスのプロバイダーの買収を、2010年代初頭より各国で進めていった。

2010年代の半ば以降、コニカミノルタの複写機・複合機販売を主軸とするオフィス事業部門は、ITサービスの販売を拡充していく。コニカミノルタが「ハイブリッド販売」と呼ぶこの取り組みは、複写機・複合機に各種のITサービスを重ね売りするというものである。このハイブリッド販売に取り組んだことが功を奏し、従来型の複写機・複合機のビジネスの行き詰まりが顕著になり始めたヨーロッパ市場において、コニカミノルタは現在も業績を保っている。