飲みニケーションで交流の場を広げていった
財務官だった私が「国際収支から見た日本経済の課題と処方箋」と名付けた有識者懇談会を立ち上げたのは、今年3月のことです。
日本経済が今後どうなるのか。どうすれば改善できるのか。そうした日本経済の構造を明らかにするには、貿易収支の赤字基調、デジタル赤字の拡大、黒字の半分が海外留保された所得収支など、現状の国際収支の評価、分析が有効なのではないかと考えたからです。
懇談会では、5回にわたり、20人の委員がインタラクティブ(双方向)に意見や考えをぶつけ合いました。侃々諤々の議論は、最初に決めた時間を超えても続きました。
懇談会の呼びかけには、様々な分野の第一線で活躍する有識者が応じてくれました。多くの方から、「有名な論客をこんなに集めた懇談会をよく開けましたね」と驚かれます。しかし私は過去に幾度もこうした懇談会や勉強会を主催してきました。私にとっては特別なことではありませんでした。
たとえば、10年ほど前には東京都と金融庁と一緒に「国際金融センター構想」を発足させましたし、大蔵省に入省してからは、コロナ禍以外は個人的な勉強会に毎晩、参加してきました。政財界、官界、言論界だけではなく、学界や芸能界、スポーツ界……。これは、と思う人と片っ端から飲み、様々な会合に参加してきました。そうして各界を代表する人たちと信頼関係を築き、彼らとの利害を離れた率直な意見交換や議論を大切にしてきました。
そんな私的な交流から派生したのが、財務省が発行する広報誌「ファイナンス」の連載「超有識者場外ヒアリングシリーズ」。この連載で私は、100人超の“超有識者”と対談しました。
東大、京大、早大、慶大などの歴代総長、ノーベル賞受賞者の野依良治さん、利根川進さん、本庶佑さん、山中伸弥さん、天野浩さん、小林誠さん、作詞家の秋元康さん、作家の半藤一利さん、池井戸潤さん、落語家の六代目三遊亭円楽さん、漫画家の弘兼憲史さん、JR東海の葛西敬之さん、音楽家の谷村新司さん、俳優の松本幸四郎(現・白鸚)さん、柔道の山下泰裕さん、将棋の羽生善治さん……。
連載の対談で、初対面の人は一人もいません。私にとって、多くは飲み仲間であり、同志、そして何よりも先生や先輩として敬愛する人たちです。
実は、連載の依頼を受けた当初、断ろうかと思っていました。私的に関係を築いた友人たちを組織が利用するような気がしましたし、表に出したくない関係もあったからです。しかし先輩から、「一般の人たちは財務省に対して財政至上主義で、視野狭窄といった誤解したイメージを持っているから、それを払拭したい」という連載の意図を聞き、引き受けることにしました。
そうしてスタートした「超有識者場外ヒアリング」ですが、とても苦労しました。半藤一利さんの著書はすでに数十冊は読んでいましたが、対談前にさらに10冊以上の関連書籍を読みましたし、物理学者や科学者の方々の専門書は、時間をかけて格闘しました。
ここから先は有料会員限定です。
登録すると今すぐ全文と関連記事が読めます。
- 広告最小化で快適な閲覧
- 雑誌『プレジデント』が最新号から読み放題
- ビジネスに役立つ学びの動画が見放題
- 会員限定オンラインイベント

