日本は観光業を成長戦略の柱に掲げているものの、不備な点が山積している。観光客の急増による交通渋滞やゴミ問題、公共施設の混雑など、いわゆる「オーバーツーリズム」が地元住民の生活に影響を及ぼしているのだ。
インバウンド促進のために、日本政府は「クールジャパン」関連事業に2025年時点で総額1326億円もの予算を割り当てているが、こうした税金投資が本当に持続可能な観光業の構築に結びついているのか、疑問の声も多い。
本稿では、観光産業が日本経済の突破口となり得るのかを専門家や業界関係者の意見を交えて考察する。
日本の観光産業のGDP貢献度は今後10年で6.8%→8%へ
日本の観光産業は、GDPへの貢献度が2023年の約6.8%から2033年には約8%に達し、雇用者数も670万人に増加すると予測されている(WTTC調べ)。旅行・観光産業の競争力の指標となる「Travel & Tourism Development Index」では、2024年に日本はアメリカ、スペインに次ぐ3位につけている。
しかし、落とし穴もある。日本の地政学的不安定さや経済変動、インフレ、異常気象といった複雑な課題が観光業の発展を阻んでしまうリスクがあるのだ。
課題1:中国、台湾、朝鮮半島などの地政学的リスク
現状、日本と中国・韓国との関係は一時よりもよく改善したように見える。しかし領土問題などがあり、いつ綻びが生じても不思議ではない。もし、そうなれば訪日客数の減少を招くことになる。中国に関しては、今後予測される米中関係の悪化の影響で、中国の反日感情が高まる恐れもある。韓国は先ごろ、ユン大統領の弾劾訴追案が可決され、政情不安が増している。最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表が次期大統領になれば、ユン大統領の外交方針で改善が見られた日韓関係が再び冷え込むだろう。
ほかにも、中国と台湾の地政学的リスクの高まりは、観光業において訪日客の減少や収益低下を引き起こすと考えられる。