「ZOZOTOWN」は国内最大級のファッション通販サイト。その運営会社のスタートトゥデイが、採寸用ボディスーツの無料配布を続けている。今年度末までに最大で1000万枚を配る予定だ。国内5世帯に1世帯がこのボディスーツを手にすることになる見通しだが、対応するPB商品の点数は限られており、短期的な収益の見通しは明確ではない。その狙いはどこにあるのか。神戸大学大学院の栗木契教授は「各社からオーダーメイド商品を受注することを計画しているのではないか」と分析する——。
ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」(スタートトゥデイのプレスリリースより)

今年度中に1000万枚の配布を計画

「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」とは、スタートトゥデイが開発した採寸用のボディスーツである。このボディスーツを使えばお店に出かけることなく、自宅で身体データを計測し、オーダーメイドの衣料をEコマース(ネット通販)で購入できる。今年7月には、このゾゾスーツを利用したメンズ・ビジネススーツの販売がはじまった。

スタートトゥデイがゾゾスーツの無料配布を発表したのは、昨年11月。ところがこの伸縮センサーを内蔵した初代ゾゾスーツは量産が難しく、100万件ともいわれる受注に対応できない状態が続いた。このため今年4月、伸縮センサーではなく、水玉模様のボディスーツを着用してスマートフォンで複数回撮影して採寸するという方式に切り替えた。

この切り替えによって、スタートトゥデイはボディスーツの生産問題を解消。今年度末までに600~1000万枚のゾゾスーツを無料配布(費用は送料のみ)し、3年後の2021年3月期までに取扱高を2.6倍の7150億円まで拡大するという野心的な計画を発表した。

今年6月には、デニムパンツとTシャツだけだったオーダーメイド商品のラインナップに、オックスフォードシャツを加え、7月にはビジネススーツとドレスシャツを投入した。世界の72の国と地域でのゾゾスーツの無料配布の計画も発表。8月1日の決算説明会では、すでに112万枚以上のスーツを配布したことも明らかにした。

ゾゾスーツ、本格展開に向けての課題

ゾゾスーツによるスタートトゥデイの新事業は、まだはじまったばかりである。計画は野心的だが、今回はその課題を考えてみたい。

ゾゾスーツをめぐっては、すでにいくつかの問題が指摘されている。リアル店舗での採寸に比べると測定精度が低くなりがちなこと、そして測定に要する時間が長いことなどである。