6月19日、東証マザーズに上場したメルカリ。時価総額は初日の終値ベースで7100億円を超えた。2013年7月のサービス開始からわずか5年。なぜメルカリだけが突き抜けたのか。山田進太郎CEOの取材を続ける井上理氏が「3つのこだわり」から分析する――。(前編、全2回)
メルカリ会長兼CEOの山田進太郎氏

上場3日後、「ほっとした」

「気分ですか。まあ、上場日まで何があるかわかりませんでしたし、ほっとはしましたけどね。(株価で)評価いただいたのは、身の引き締まる思いです。社内の雰囲気は……来期に向けた幹部合宿をしたりと、会社にいなかったので、正直、よくわかりません(笑)」

上場セレモニーから3日後の6月22日、東京・六本木ヒルズのメルカリ本社。ロビーは電通やグーグルといった大企業から贈られた胡蝶蘭などの花で埋め尽くされており、祝賀ムードが漂う。しかし、そこで対面した会長兼CEOの山田進太郎に“浮かれた”様子はない。

山田の言う「幹部合宿」はメルカリ創業期から定期的に開いているもの。今回は上場関連行事と日程が重なったため、都内のホテルの会議室を借り、2018年7月から始まる新年度に向けた課題や戦略を終日、役員で話し合った。上場は単なる通過点に過ぎないというスタンスを崩さず、冷静に次を見据えているようだ。

後発ながら突出したメルカリ

国内のフリマアプリ市場、あるいは、個人間の電子商取引、いわゆる「CtoC」市場において、メルカリの強さは突出している。

メルカリの2017年6月期の流通総額は前期比76.9%増の2300億円。その数字は加速度的に伸びており、直近四半期(2018年1~3月)の実績である938億円を単純に年額に換算すれば、すでに3700億円規模にまで膨らんでいる計算になる。

経済産業省の調査によると、2017年のフリマアプリの市場規模は4835億円で、ネットオークション市場のうちCtoCは3569億円。メルカリはフリマアプリ市場の過半数を占め、業者による販売を排除して個人間取引に限れば、ネットオークション首位の「ヤフオク!」に迫る勢いだと言える。

しかし、メルカリは後発だった。