スタートトゥデイからすれば、それでもゾゾスーツを使うメリットはある。店に出向く手間がなくなるのだ。それなら「何度かやり直しながら採寸する羽目になっても、30分ほどですむなら問題ない」「採寸の精度は高くないといっても、首回りやウエストの1〜3センチの誤差は気にならない」という人もいるはずだ。

しかし、それでは万人向けとはいえない。特にファッション・リーダー的な消費者に受け入れられるためには、さらなる改善が必要だろう。さらに今後ネット・オーダーメイドの受注量が増えていったときには、生産管理の体制を整えなければいけない。多くの消費者を納得させる品質の服を供給できるかどうかは未知数だといえる。

各種の問題がある。とはいえ、これらの問題については、急速に進むAIの発展、そして昨今のグローバル供給ネットワークの充実を踏まえると、一時のもたつきはあっても短期に改善されていく可能性が高い。むしろ重要なのは、その先に広がるビジネスの可能性だ。

「ネットでは試着ができない」

スタートトゥデイの主力事業のゾゾタウンは、国内ファッション通販の最大手サイトのひとつである。

振り返るとEコマースは、書籍やPCの販売、そして航空券やホテルの手配などの分野から広がってきた。そのなかで、ファッション衣料は、Eコマース利用が広がらなかった分野だ。その理由は、「ネットでは試着ができない」という点にあった。

ファッション衣料は店頭で試着してから購入することが前提だった。同じサイズでも、ブランドが違うと自分の体形に合わないことがある。それだけではない。同じブランドの商品でも、アイテムが異なれば、同じサイズ表示のものを買っても体に合わないということが起こる。これがファッション衣料なのだ。