回転ずしチェーン「無添くら寿司」を運営するくらコーポレーションの業績がさえない。既存店売上高は4カ月連続前年割れで、業界最大手「スシロー」の16カ月連続前年超えとは対照的だ。店舗運営コンサルタントの佐藤昌司氏は「一人負けの原因は『バイトテロ』だけではない」と分析する――。
「無添くら寿司」ホームページより

既存店売上高は大幅減収

回転ずしチェーン「無添くら寿司」を運営するくらコーポレーションの業績がさえない。3月15日に発表した2月の既存店売上高は、前年同月比6.2%減の大幅減収だった。客数は6.1%減、客単価は0.1%減。不適切動画問題が大きく影響したとみられる。

2月6日、くら寿司のアルバイト従業員が、ゴミ箱に捨てた魚をまな板に戻して調理しようとする動画をSNSに投稿した。これが拡散し、複数のメディアが一斉に報じる事態となった。同社は謝罪し、再発防止策を講じるほか、動画を配信した従業員2名との契約を終了し、「刑事と民事での法的措置をとるための準備に入った」と発表。事態の沈静化を図った。

くら寿司以外でも、外食チェーンやコンビニエンスストアにおいてアルバイトによる不適切動画が拡散するトラブルが相次いで起きている。

他チェーンは大きな落ち込みナシ

1月下旬、牛丼チェーン「すき家」で調理器具のおたまを股間にあてがう動画が拡散した。2月には、中華料理チェーン「バーミヤン」で調理中の鍋から上がった炎で口にくわえたタバコに火をつける動画が拡散した。

このほか、「セブン‐イレブン」でおでんのしらたきを口に入れて吐き出す動画、「ファミリーマート」で会計中の商品をなめる動画、定食チェーン「大戸屋ごはん処」で配膳用のトレーで裸の下半身を覆う動画がそれぞれ拡散した。

立て続けに起こった“バイトテロ”動画騒動だが、筆者の感覚では、くら寿司で起きたものがとりわけショッキングだった。「ゴミ箱に捨てた食材をまな板に戻す」という行為が、過去にも行われていたかもしれないと思うとゾッとするためだ。ほかと比べて、不快さが際立っていたように思う。

同様の問題が起きたほかの飲食・コンビニチェーンで、くら寿司ほど落ち込んだところはない。大戸屋は前年同月比2.8%減だが、すき家3.0%増、セブン0.9%増、ファミマ1.5%増と前年超えのチェーンも多く、くら寿司の落ち込みは際立っている(バーミヤンは未公表)。もちろん、それ以外の要素も関係してくるため一概には言えないが、諸状況に鑑み、不適切動画問題の影響が最も大きかったのはくら寿司だと筆者は考える。