反日思想を批判する『反日種族主義』がベストセラーに

ところでいま韓国では、韓国近代経済史専攻の元大学教授ら6人が書いた『反日種族主義』という書籍がベストセラーになっている。発売は今年7月で、すでに10万部を超えているという。日本語版は文藝春秋社から「日韓危機の根源」というサブタイトルで11月14日に発売予定だ。

韓国で10万部を超えるベストセラーとなっている『反日種族主義』の書影。

本の内容をざっと紹介すると、

「韓国人は、反日思想を掲げなければ生きていけない種族だ」
「日本を先祖代々の敵だと捉える感情は行き過ぎだ」
「あらゆる嘘が広まっているのは、反日種族主義によるものだ」

と反日を痛烈に批判している。

NHKの「おはよう日本」は、代表著者である元ソウル大学教授のイ・ヨンフン氏に取材し、9月29日の放送で以下のような主張を紹介している。

「朝鮮半島では日本の統治下によって米の生産量や輸出量が大幅に増加し、その結果として経済が発展した」
「太平洋戦争中の慰安婦や徴用工をめぐる問題では、これまでの韓国の通説に異を唱えたい」
「反日は善で、親日は悪であるという感情を韓国国民が克服できなければ、韓国の未来はない」
「韓国が先進的な社会や経済・政治へと進むためには、日本に対する心からの信頼と協力の体制が不可欠だ」

反日感情の根強い韓国で、こうした主張を書いた本が10万部を超すベストセラーになるのは異例だ。実に興味深い。

日本は「徴用工問題は解決済みだ」と主張するだけでいいのか

日韓関係が「戦後最悪」とまで言われるようになったきっかけは、韓国大法院(最高裁)が日本企業に賠償を命じた元徴用工判決にある。

あの判決から10月30日でちょうど1年になるが、これまで安倍政権は韓国や国際社会に対し、1965年の日韓基本条約・請求権協定に基づいて「元徴用工の補償問題は『完全かつ最終的に解決済み』だ」と強く主張してきた。

だが、当時、日韓の国交は正常化したばかりで、韓国は軍事体制下にあり、東西冷戦によって条約や協定そのものに曖昧さを持っていた面がある。これはノンフィクション作家の保阪正康氏などが指摘していることだ。