なぜ「地域商社」を名乗るのか

写真提供=IDENTITY
ロゴや商品デザインにもこだわり、美濃加茂茶舗をきっかけに地域の関係人口増加を目指す。

小売事業者がコンサルティングという異業種に参入する一方で、異業種から小売業に参入する事例も増えている。名古屋でコンサルティング事業を行うIDENTITY(アイデンティティ)は、今年岐阜の美濃加茂市に店舗を構え、「美濃加茂茶舗」というブランドを立ち上げた。IDENTITYが自らを「地域商社」と名乗りはじめた背景を、代表の碇和生氏は下記のように語る。

「私たちは名古屋を中心とした東海圏で『地域商社』として事業を行っています。事業内容としてはコンサルティング企業や代理店にも近いのですが、彼らの場合はどうしてもその地域の企業からの発注を取り合うパイの奪い合いになってしまうという側面があります。しかし私たちが目指しているのは地域資源を活用して地域以外からの収入を得ること。つまりパイ自体を大きくしていくことなのです」

小規模事業者にこそユニークな資源が眠ってい

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改装したビルの1Fでオープンした美濃加茂茶舗の店舗。上階では宿泊することもできる。

もともと東京を拠点にしていた碇氏の人脈を使い、東京の最先端のトレンドや事例を紹介し実装していくコンサルティング企業として名古屋近辺のクライアントを多数獲得し、2016年設立の若い会社でありながら行政からの相談も増えている。一方で、コンサルティング事業だけでは地域のクリエイターコミュニティやブランドビジネスのプレーヤーとの接点を開拓できない点に課題を感じていたという。

「地域商社として成長していくには、地域資源とのつながりを持つことが必要不可欠です。しかし、コンサルティング事業だけではフィーを払うことができない小規模事業者から相談をもらうことは難しい。一方で、そうした小規模事業者にこそユニークな資源が眠っています。そこでまずは美濃加茂にあるビルを改装して、人が集まる場所をつくることに着手しました」(碇氏)

縁あってビルを賃貸できることになったものの、美濃加茂市は人口5万人ほどの小規模な自治体だ。場所をつくっただけでは人は集まらないと考え、呼び水になるような商品をつくろうと考えて生まれたのが「美濃加茂茶舗」だ。美濃地方は古くから美濃焼で知られるお茶文化の聖地であり、近くに茶畑もある。美濃加茂ならではの商品を開発し、ビルの1階でカフェ併設の店舗をつくることで人が立ち寄りたくなる場所にすることを狙った。