シチズンが秋に発売する時計型デバイスで「クラウドファンディング」を行い、目標の60倍を超える1億円を集めた。異例の大成功の裏には、「売ることを目指さない売り場」への出店があったという。小売り現場の最新動向を報告する——。
写真提供=蔦屋家電エンタープライズ
蔦屋家電+の様子

新しいものには新しい売り方を

シチズンの「Eco-Drive Riiiver(エコ・ドライブ リィイバー)」は、クラウドファンディングで目標の60倍を超える1億630万円を集めた(8月31日で終了)。Eco-Drive Riiiverは、アプリと連動して個々人のライフスタイルにあわせた機能を付加できる時計型デバイスだ。

老舗時計メーカーのシチズンが従来の時計の枠組みに捉われず、ユーザー自身が新たな機能を開発できるマイクロ・コミュニティサービスと連動した商品の開発に着手した背景には、顧客の嗜好の変化があったとシチズン時計営業統括本部オープンイノベーション推進室室長の大石正樹氏は語る。

「これまで時計は時間を表示する道具として使われてきましたが、現代はスマートフォンさえあれば簡単に時間を知ることができます。また宝飾品としての時計に関心がない若年層にも時計というデバイスに興味を持ってもらうための商品として開発しました」

しかし、これまでの商品ラインナップとは一線を画す商品を従来の流通網で販売しても既存顧客にしか届けることができない。新しいものをつくったからには、売り方も新しい手法を用いなければならない。そこで目をつけたのがクラウドファンディングGREEN FUNDING(グリーンファンディング)の活用だった。

ここを通じて事前販売を行う一方で、実際の商品を見てもらうために、同クラウドファンディングと同じCCC系列の蔦屋家電の次世代型ショールーム、蔦屋家電+(プラス)に出展した。そこでは興味を持った顧客は売場に設置してあるQRコードからGREEN FUNDINGのページへと遷移して決済を行うことができる。

こうしたオンラインとオフラインの相互活用が、目標金額の60倍以上の支援を集めるという大成功につながった。