剣道の名門校・国士舘高校で、高校3年生の剣道部主将が監督の執拗なハラスメントで適応障害に追い込まれた。学校は監督を半年間の謹慎処分としたが、保護者らは猛反発している。半年後には剣道部の監督と寮の舎監として復帰する見込みだからだ。監督は親元を離れて寮生活をする生徒たちを暴力と暴言で支配していた。剣道の名門校で起きたスクールハラスメントの実態をリポートする――。
国士舘高校剣道部の集合写真。右端が謹慎中の監督だ。

「大学で剣道を辞める人間に教えようと思わない」

東京都世田谷区にある国士舘高校の剣道部は、都内でトップクラスの強さを誇る名門だ。2018年度の春と秋の東京都大会では、男子団体でそれぞれ優勝している。

今年、男子の主将を任されたAさんは、関西の実家から寮に入って、仲間とともに全国制覇を目指して努力を重ねてきた。Aさんの高校生活が一変したのは今年4月22日。剣道部の監督、部長と、高校卒業後の進路について相談した三者面談がきっかけだった。

国士舘高校の剣道部では、そのまま国士舘大学の体育学部武道学科で剣道を続ける卒業生が多い。しかしAさんは「警察官を目指して、法学部に進学して勉強したい」という自分の考えを伝えた。将来のことを十分考えて出した結論だった。

しかしこの日を境に、Aさんに対する監督の態度は明らかに変わっていった。

面談から5日後、国士舘高校の剣道部は関東大会の予選が行われ、団体の決勝まで勝ち上がっていた。Aさんは決勝戦に出場したが引き分け。結局、国士舘高校は敗れてしまった。その夜、Aさんは、監督の部屋に呼ばれて、こんな言葉を浴びせられた。

「今日の試合を見て、違うチームの試合を見ているようだった。逃げて逃げて、お前の生き方とか進路の決め方と同じだろ。大学で剣道を辞める人間に剣道を教えようとは思わないし、即刻辞めてくれ。他の人は一生懸命やってるんだから、遊びでやるようなやつは邪魔だから辞めてくれ」