「殴ったところを見たことがございますか」
これらの発言からは、大学で剣道を辞めると言ったAさんにハラスメントを行ったことを、悪いとは思っていないように受け取れる。さらに、他の部員への体罰に関しては認めたものの、「コツン」「パチン」という形容詞を使いながら「軽くたたいた程度だった」と説明した。
説明会でAさんの父親は「加害者になった方を擁護する言葉をなぜ私に聞かせるのですか。言葉の暴力ですよ。体罰ですよ。熱い思いがあったら許されるんですか」と発言した。すると、同席していた元校長の相談役が、突然、こう問いただした。
「非常にあいまいなものが飛び交っているように私には思えるんですね。じゃあ誰が見て、誰がやられたのか。お母さん方は見ましたか。先生がどこかの遠征に行って、殴ったところを見たことがございますか。蹴ったところを見たことがございますか」
保護者らは監督の退任を再度求めたが、校長は「監督が反省すれば、予定通り半年間で監督に戻す」と述べ、反省しているかどうかの判断は学校側が行うとした。
生徒よりも教員を守ろうとする学校の姿勢
Aさんは監督が謹慎となった7月以降、学校と寮に戻り、剣道部にも復帰している。だが、問題が解決したわけではない。説明会では監督退任の要望が聞き入れられなかったばかりか、具体的な再発防止策も示されなかった。Aさんの父親は、生徒よりも教員を守ろうとする学校の姿勢に憤りを感じている。
「校長は最初は息子のことを心配されていたのですが、だんだん監督を守るような言動に変わっていきました。処分の体裁だけとって、この問題を静かに終わらせようとしているように感じます。
説明会にいたっては、悔しさとつらさしかありません。本当にふざけた説明会だと思います。『体罰を見たことがあるのか』とおっしゃっていましたが、われわれは子どもを学校と寮に預けていて、見えないところでやられているのです。
とにかく監督を戻してほしくない思いに変わりはありません。これまでの実態を聞いても監督のやり方が陰湿で、時がたてばまた同じことをやると思います。息子は保護した時、本当に大変な状態でした。大きな事故が起きてからでは遅いのです」