体重が激減。医師の診断は「適応障害」
Aさんはこの日の夜、友人に携帯電話を借りて父親に電話した。父親によると、言葉をうまく発することができず、嗚咽する時間が長かったという。それでも少しずつこれまでの経験を話そうとする息子の様子に、尋常ではないものを感じた。このため父親は、埼玉県に住むAさんの祖父母に保護してもらった。
6月7日に病院で診断を受けたところ、「適応障害」との診断を受けた。その後、駆けつけた父親がAさんに会ったところ、顔つきが変わり、体重が激減していた。自宅に戻ってからも、なかなか布団から起き上がることができず、しばらくは布団とトイレを往復するだけの日々を送った。
さらにAさんからは、監督から「竹刀の置き方が悪い」として後頭部を平手ではたかれたり、「試合内容が悪い」としてこめかみを拳で殴られたり、といった体罰を受けていたことを聞いた。
Aさんが適応障害に追い込まれたことは、剣道部員の保護者の多くは知らなかった。親元を離れて寮生活をしている部員が多く、その大半が携帯電話を没収されていたため、情報が入ってこなかったのだ。
部員を「ゴキブリ野郎」「奇形児」と呼ぶ
それでも有志の保護者が監督のハラスメント行為について調べ始めた。すると、Aさんに対してだけでなく、監督が傘や竹の棒、木刀、太鼓のバチでたたくなどの暴力をたびたびふるっていたことや、ケガをしても監督の同級生が経営する接骨院にしか行かせなかったことがわかった。
加えて、部員を「ゴキブリ野郎」「奇形児」と呼ぶなど、言葉の暴力によって部員を恐怖で支配していた実態が浮かび上がった。
部員たちは調査に対して「このままの状態がエスカレートすると自殺者が出ると思います」と答えた。そして「後輩たちに悪影響を及ぼさないためにも、監督と部長には部活動に関わってほしくない」という声が大半だった。