「接吻2000円」お手製のサービス表まで

こういう人には「ヘルパーはデリヘルではありません」といって毅然きぜんとした態度で断ります。実際に迫ってくることはないので、こわいということはありませんが、こういう言葉によるセクハラも、ヘルパーをひどく傷つける行為には違いありません。

また、私の経験ではありませんが、「サービス価格表」という紙が置いてあるのを、ヘルパーとの連絡や調整を担うサービス提供責任者が発見したことがあります。そこには「手を握る=100円、胸を触る=500円、胸を直に触る=1500円、ほっぺにキス=1000円、接吻=2000円、あそこを触る(15秒)=2500円……」などと書かれてあったそうです。

他のヘルパーに聞き取り調査をすると、40代前半の女性ヘルパーが「あんたたちも薄給で大変だろう。こんなの作ってみたんだけど、どれか選んでくれないかなあ」といわれたと証言したのです。

彼女が冗談で「みんな、ゼロが1つ足りないわよ」というと、「そうか、わかった。いくらでもやるから、いいことしよう」と目をらんらんと光らせたそうです。それを見て気持ちが悪くなり、それ以来、悩んでいたとのことでした。

これはかなり悪質なセクハラといえるでしょう。注意して改善されたそうですが、「男性ヘルパーに代わってもらいますよ」とか「セクハラです」といえば、収まる可能性はあります。

それにしても、こんなサービス価格表まで作るとは、知能犯といえますね。男ってやつには、本当にあきれます。

夫とヘルパーの仲を疑う認知症の妻

これは直接的なセクハラではありませんが、セクシャリティに関わる事例として紹介したいと思います。

私が訪問していたのは80代半ばの認知症のF子さんで、10歳年下のご主人と同居していました。F子さんは、若い頃はさぞや美人だっただろうと思われるような女性で、いつも身なりもきちんとしています。

私の担当は食事の介助や服薬、更衣してデイサービスへの送り出しですが、F子さんの「この服は主人が買ってくれたの」という説明を聞きつつ洋服を着せると、今度はバッグの中身をチェックします。「ティッシュがないと困るでしょ」といいながらバッグにティッシュやハンカチを入れるのですが、入れたことをすぐに忘れてしまい、同じことを何度も繰り返すのです。これは記憶障害が特徴の認知症の1つで、F子さんにかぎったことではありません。

そばで見ていたご主人が業を煮やし、「いい加減にしろ」と怒鳴りました。すると、びっくりしたF子さんは、あろうことか、私のほうを見て「あんた、旦那とできてるんでしょっ!」といったのです。ご主人に怒鳴られたF子さんが、自分がデイサービスに行った後、私とご主人が何かすると勘違いしたのでしょう。