ヘルパーをベッドに誘う80代の男性

一般的に70代以上のお年寄りというと、枯れたイメージがあるかもしれませんが、実際にはそうではありません。性的衝動はいつまでも残っていることを実感します。

私がヘルパーとして関わった80代のKさんも、そうしたひとりでした。半身不随がある方で、食事を食べさせた後、薬を飲ませ、歯を磨いて、寝間着に着替えるのを手伝い、最後にベッドに寝てもらうのが仕事です。これを就寝介助といいます。

そのときも、私が「じゃあ、ベッドに寝ましょうね」といいながら、身体を支えようとしました。すると、いきなり麻痺まひしていないほうの腕で抱きつかれたのです。あやうくベッドに引き倒されるところでした。

反射的に身体をもとの体勢に戻し、Kさんから離れました。そして、結果的にベッドに横になった格好のKさんの身体に布団をかけ、何食わぬ顔で「これから茶碗を洗わないといけませんから、先に寝ていてくださいね」といい、台所に戻ったのです。

Kさんはというと、不満そうに「だって、ベッドに寝ようっていったじゃないか」と文句をいっています。これを聞いて「男性はいくつになっても性的な欲望があるんだ」と驚きました。まさか「ベッドに寝る」という言葉を「床をともにする」という意味に解釈するとは、夢にも思いませんでした。

「お金を払うからやらせろ」

Kさんが自分の行為を正当化するために、意図してそういう反論をしたのか、その辺のところはよくわかりませんが、ここで大げさに騒ぐと、相手によっては「なんだ、おまえは生意気だ」といって怒り出す人もいるので、さりげない態度を取るのが賢明です。

女性から拒絶されると、自尊心が傷つけられる人もいますからね。開いた傷口に塩を塗るようなことをしては逆効果になります。こちらがキッパリとした態度で接すると、「このヘルパーには手を出せない」と思うのか、そうした行為は止むことが多いです。とはいえ、おとなしそうなヘルパーに同じようなことをする可能性もあるので、事業所には報告します。そうやって情報を共有するのです。

利用者のなかには、ヘルパーをデリヘルかと勘違いしている人がいます。「お金を払うから、やらせろ」といって交渉してくるのです。この時点で悪質なセクハラですが、おかまいなく真顔でいうのですから、本当にまいってしまいます。

この手の人は、「あんた、いくつになる?」とか「結婚しているのか?」などとプライベートなことを聞いてきます。結婚しているというと、セックスの話題を持ち出し、こちらの反応を見ながら「やらせろ」といってくるのです。