家族と利用者の板挟みもよくある
私は、ご主人が怒鳴る前に声を掛けていればよかったと反省しながら、2人をなだめ、F子さんをデイサービスの送迎車になんとか乗せますが、F子さんは車に乗ってからも、こちらのほうを不審そうに見ています。
このままではまずいと思った私は、送迎車が向かう方向に歩き出し、F子さんが安心した表情になるまで手を振って送り出しました。
私の次の訪問先は送迎車の方向とは正反対でしたが、F子さんの疑念を晴らすためにはしかたがありません。それ以降、F子さんはデイサービスの送り出しの度に「あんた、旦那とできてるでしょう」というようになってしまったのです。
頭から離れなくなったようでした。認知症は記憶に障害のある病気ですが、マイナスの感情は定着しやすく、このことに関しては忘れることはなかったのです。
F子さんの訪問には私以外のヘルパーも関わっていたので、みんなで「これはご主人への愛だね」と話していましたが、毎回のようにいわれるので、結構まいりました。
ヘルパーは、こうした家族と利用者の板挟みになることもあります。認知症の人の「嫉妬妄想」や「物取られ妄想」など、現場ではよく出会います。そういう意味では、夫と妻の関係性やセクシャリティには配慮が必要です。