1社しか知らない人とそうでない人は何が違うか。約20年前にマッキンゼーのコンサルタントだった篠田真貴子氏は「今思うと、マッキンゼーを早々と辞めたことは、キャリアにおいて大きくプラスだった。転職先では自分に対する評価が180度違った」と振り返る――。
2019年7月3日(水)、日比谷ミッドタウンBASEQホールにて「ローンディールフォーラム2019」が開かれた。テーマは「人材流動化のその先にあるもの」。登壇者は、アステラス製薬会長の畑中好彦氏、元経営職の篠田真貴子氏、早稲田大学大学院教授の入山章栄氏、ローンディール社長の原田未来氏の4人。約300人の前で、これからの人材育成についてトークを繰り広げた。
「終身雇用」というフィクションを語るな
【篠田】「事実上の終身雇用って、もうないとわかっていますよね、みんな。その事実を無視したまま、終身雇用ですっていうフィクションを語る方が良くない。フィクションを前提に置くのではなく、働く人と会社が正面からその事実に向き合って、『じゃあどうやってキャリアを作っていくの?』と話し合えるのがいいと思っています。
人材流動化というと、みなさんリスクのことをおっしゃる。でもそれを乗り越えないと先がない。私が当時いた日本長期信用銀行(現・新生銀行)も、経営破綻を迎えて多くの優秀な方が去りました。去った彼らは日本を支える別の企業で今も大活躍されていらっしゃいます。そのまま会社が無理やり人材を抱えていたら、社会にとって非常にマイナスだったと思います」
マッキンゼーから退職勧告を受けて……
【篠田】「私は(マッキンゼーにいた頃)成果の伸びが足りないといわれて、最後は『もうお引き取りください』みたいな感じで退職しました(笑)。当然落ち込みます。でもそのままダメな人として居続けることは自分のチャンスを失うことにもなる。今思うと、すぐに転職したことがその後のキャリアにどれだけプラスだったか。
それにマッキンゼーにいた頃と転職先では自分に対する評価が180度違いました。そこで、なるほど! と思いました。自分は変わっていないのに、会社のバリューによってこんなにも評価が変わるんだと」
【原田】「大手企業から一定期間、ベンチャー企業に社員を行かせる「レンタル移籍」もまさにそうです。移籍者の多くは一社しか経験したことがない。それだとひとつの評価軸の中でしか判断できないので、別の企業カルチャーに触れて、その軸が増えることがいい経験になる」