「経営者に中国古典を、人間学を学んでもらいたい」。そう熱い思いで語るのは、経営にも人生にもつまずきかけたとき、中国古典に触れて窮地を脱した経営者・小林充治さんだ。岡山で経営者を対象に中国古典を学ぶ会を主宰。経営者に大切なのは「人としてどう生きるか」ということ。その指針となるのが『論語』だと言う。
「古典活学塾」の講義風景。

いまなぜ『論語』なのか?

私は岡山市に本部を置く歯科医院チェーン「アスペック・グループ」の経営者です。私の元から独立した歯科医師を支援するカタチでグループ運営がスタート。その後、経営に苦しむ医院の経営指導もするようになり、現在では歯科医院や歯科技工所を合わせて11法人のグループを運営しています。

縁あって経営者の人間力育成のために、「古典活学塾」を始めて8年。『論語』は約2500年も前に孔子が弟子たちと語り合った言行録で、いまも読み継がれている中国の古典のベストセラーです。『論語』をテーマに経営者向けに解説して気づいたことなどを踏まえて、いま『論語』から何を学び、どう人生や経営に役立てたらいいのか、そのことをまとめたのが、私の著書『人間を見極める 人生を豊かにする「論語」』です。

人生の窮地に陥って求めた救いとは?

私は30代で岡山市内に歯科医院を開業、多くの患者さんで繁盛し、地元の歯科医師会の役員も務めるなどすべてが順調でした。ところが、子育てのために歯科医師をしていた妻が家庭に入ったことで私の母と家庭がぎくしゃくし。一方、私は医師会の活動にのめり込んで家庭を顧みる余裕がなく、上の娘が心を病んでしまいます。それに前後して、医院の経営は、スタッフの出入りも激しくなってきたうえ、借入金を増やしたことで資金繰りに苦しむようになっていました。40代になった時のことです。

私は八方塞がりの中で、「このままではいけない。なんとかしなくては」と必死に救いを求めました。

その一つが、稲盛和夫さんの経営哲学を学ぶ経営者の集まり「盛和塾」岡山に入会したことです。稲盛和夫さんも古典を学び、それを経営に活かすことで経営者として大成された人です。稲盛さんの教えに触れたことで、中国古典を学ぶきっかけができました。

もう一つが、歯科医専門のコンサルタントである齋藤忠先生に顧問をお願いし、経営の立て直しを図ったことです。そこで学んだのが経営の数字を把握すること、もう一つが経営者には「徳」が必要だということ、つまり「人間学」の大切さです。明治生まれの思想家、安岡正篤さんの「安岡人間学」を学びなさい、と諭されました。齋藤忠先生も、「安岡人間学」を学ぶことで苦労を乗り越えてきたのでした。