野党に不信任決議案を出させて、衆院解散を断行したい
なぜ北朝鮮はこのような非難の言葉を日本に向けたのか。それは金正恩氏が安倍首相の足元をみているからである。金正恩氏は、自分の選挙のために日朝首脳会談を開こうとする安倍首相の思惑を見抜いたのだ。
いまのところ、安倍首相のもくろみは失敗した格好だが、この先、したたかで気まぐれな金正恩氏が安倍首相の意を受け入れる可能性がないとは言い切れない。
安倍首相は6月12日から14日にかけてはイランを訪問する予定だ。28日と29日には、大阪で主要20カ国・地域首脳会議「G20」が開催され、日本が議長国を務める。当然、安倍首相の言動が世界のニュースに流れる。
永田町では、6月19日辺りに開催される党首討論で、憲法改正の是非を取り上げ、そこから野党に不信任決議案を出させて、衆院解散を断行するとの見方も出ている。
菅官房長官も「内閣不信任案→衆参同日選」に誘い水
すでに菅義偉官房長官は、不信任決議案は衆議院を解散する大義になり得るとの認識を示している。
これは5月17日午後の定例記者会見で、「野党側が国会に内閣不信任決議案を提出した場合、国民に信を問うために衆議院を解散する大義になりますか」との質問に答えたもので、菅氏は「それは当然なるのではないか」とはっきりと話している。
菅氏の答えは野党に「不信任決議案を出せ」と言っているのと同じだ。いわゆる“政治的誘い水”である。
安倍首相もこんな発言をしている。5月30日の経団連の総会だった。
「『風』という言葉に、永田町は大変敏感だが、ひとつだけ言えることは、『風』というものは気まぐれで、誰かがコントロールできるようなものではない」
この安倍首相の発言に対し、野党幹部の1人である立憲民主党の福山哲郎幹事長は「解散権は首相にある。それを『気まぐれだ』と自分で認めている。よく分からないが、『解散について、はっきりと言明をしない』ということだと思うので、こちらが右往左往するような発言だとは思わない」と語っていた。
安倍首相の発言は明らかに誘い水である。菅氏の言葉と同じだ。安倍首相は自ら野党に王手をかけたのである。そうでなければ、わざわざ「永田町が風に敏感だ」などと切り出すわけがない。