お金を持っていないからといって、経済に興味を持たないでいるとどうなるか。経済評論家の横川楓さんと経済記者の高井浩章さんは「お金から逃げていると、人生が詰む」と口をそろえる。なぜ若者ほどお金に興味をもつべきなのか――。
経済評論家・横川楓さん(左)、経済記者・高井浩章さん(撮影=インプレス「しごとのわ」編集部)

20代のリアルは「貯蓄ゼロ」

【高井】横川さんの新刊の『ミレニアル世代のお金のリアル』(フォレスト出版)、これ本当にリアルで、正直、「ここまでツラい現実を突きつけちゃっていいの?」という印象を受けました。でも、これこそ、既存のお金や経済の本とは違う、同世代だからこそ書けるものだな、と。資産運用や貯蓄の本って、私のような40代の団塊ジュニアよりもちょっと上、バブル世代から元祖・団塊世代あたりの、経済的にちょっと余裕がある人向けのものが多いですよね。

【横川】そうなんです。「貯蓄を」とか「資産形成を」とか言われても、私たち世代とはズレがあるなってずっと感じていました。同世代の友人は、例えば奨学金の返済が大変で結婚なんて無理とか、結婚していてもどちらかは派遣社員で貯蓄する余裕なんてないって人が少なくないです。20代の単身世帯の保有金融資産って、中央値で見ると「ゼロ」なんです。このデータ、衝撃的って言われるんですけど、「投資とか貯蓄って言われても、そんなお金ないよ」というのが私たちの世代の現実です。

仕事や生活を回すので精いっぱい

【高井】問題は、貯蓄や資産運用に回す余裕なんてないんだから、お金や経済についても知識を得ようという気持ちが出てこないんじゃないかってことですね。

【横川】生まれた時から不景気育ちなので、ある程度お金については堅実な世代なのですが、漠然とした不安もありつつも、ひとまずは仕事や生活を回すのに精いっぱいという人も少なくはありません。政府が進めている「貯蓄から投資」といった政策も、私たちの世代はターゲットとして真剣に考えられていないんだろうなと感じます。

【高井】銀行や証券会社なんかのお得意さんも、金融資産の大半を握っている高齢者層ですね。いきおい、お金に関するセミナーも手数料を落としてくれる、そういった層がターゲットになりがちです。でも、本当は経済的に苦しい若者世代こそ、お金のことを考えなきゃいけないし、経済の基礎を学べる機会がもっと必要ですよね。