若者の投票率が1%下がると約13万円の損

【高井】おカネの教室』は、経済のルールを若いうちに学んでもらおうという狙いで書いたものです。物語を楽しんでいると、働いて富を生み出すこと、その富を株式市場などを通じて投資して「回す」ことが経済全体にどんな意味があるのかといったテーマがストンと腹に落ちるようになっています。それは、ルールも知らないでゲームに参加するのは危なっかしいからというのが第一の理由なんですけど、もう1つ、「このルールはおかしい」と思ったら変えていくのが若い世代の権利だし役割だという思いもあったんです。だから、横川さんがご著書で、若者が投票という形で政治に参加するべきだと強調していた部分に強く共感しました。

【横川】東北大学大学院の方の研究に、若者の投票率が1%減ると若者1人当たり1年で約13万円も損をするという推計があります。実際に若い世代は税金や社会保険料など払っている分よりも社会保障にまつわる恩恵を受けている分のほうが少ないと思っている人も多いはずです。私自身は親から、かならず選挙権を行使すること、そのために政党や候補者の情報をしっかり調べることが重要だと教育されました。ただでさえ少子高齢化で若い世代は減っていくのに、選挙へいかなければ人数の多い高齢者層が優遇される社会保障の政策が通りやすくなって、その分、若い世代にしわ寄せが来るからです。そういった背景もあり、お金と選挙の関係についても知ってもらいたく、選挙の話も入れたいなと思っていました。

若い世代もお金に関心がないわけじゃない

【高井】日本の若者は、見ていてちょっと歯がゆいですね。私は2016年から2年ほど仕事の関係で欧州にいたのですが、格差問題や富の集中を是正しようという機運が高まって、イギリスやフランスでは若い世代の政治参加意欲が盛り上がっています。米国でもオカシオ=コルテスという史上最年少の女性議員が注目の的ですね。彼女の主張も「若者や低賃金労働者にもっと経済成長の果実を分配しよう」というもので、それを若者が熱狂的に支持している。最近、英『エコノミスト』誌が「ミレニアル世代の社会主義」という特集を組んだくらい注目されているムーブメントです。日本でも同じような、新自由主義に対抗するうねりのようなものが出てくると面白いんですけどね。

【横川】若い世代の人たちも、お金に関心がないわけじゃないんです。男子学生向けのファッション誌『FINEBOYS』(日之出出版)で連載している「ハタチの経済学」の読者の方からも、「いつもわかりやすくて勉強になります」という反応がけっこうあるんです。