マイルールがあればSNSに振り回されない
ツイッターとフェイスブックでは、いくつかのルールを決めて使っています。
まず、前述したように1日に最低3回ぐらいは投稿すること。次に自分が本当に思ったことを正直に発信すること。そしてコメントをくれた人には返信すること。明らかに悪意があると思われる人のみはスルーすることなどです。また、ツイッターの場合はアカウントをフォローしてくださったらできるだけフォロー返しをしていますし、フェイスブックの場合は友達申請が届いたら上限に達するまでは原則として受けるようにしていました。
「SNS疲れ」という言葉がありますが、受け身で使うのではなく、このようにいくつかのルールを決めて主体的に使えば、振りまわされることはなくなるでしょう。
初対面の人と会う前に、相手のフェイスブックやツイッターを必ずチェックする人がいるようです。たしかに便利かもしれませんが、僕は情報収集のためにSNSを見ることはまずありません。僕の場合は、個人の経歴よりも、会社概要をチェックする方がはるかに多いですね。
例えば有名企業のトップに会う前に、ウィキペディアで経歴などをざっと調べることはあります。しかし、実際に顔を合わせて話したほうが、SNSに書かれている内容を読むより、はるかに人柄がわかります。
ウェブのニュース記事も、大きな事件の速報くらいはたまに目を通すこともありますが、基本的には読みません。情報の仕入れ先は、新聞や本と決めているからです。
最大の魅力は「一期一会のご縁」がつながること
SNSは苦手でしたが、そうしたマイルールさえ守っていれば、一期一会のご縁がつながるのが魅力だと気づきました。リアルの世界では接点がない人ともつながりが生まれます。
一つのツイートがきっかけで、ありがたい出会いに発展したことは多々あります。
ツイッターを始めてまもないころ、京都大学の友人が訪ねてきて、「自分の代わりに、イスラム史を教えて欲しい」と頼まれました。グローバルリテラシーという講座の中でイスラム史をやることになったが、もう一度イスラム史を整理するのが面倒なので、歴史オタクの僕に頼みたいということでした。
講義に行く当日、ツイッターで課せられた「一日最低3回」ノルマのネタにちょうどいいと思って、「今日は初めて母校の京大へ講義に行きます」とツイートしました。すると、フォロワーから「テーマはリスク・マネジメントですか、ベンチャー論ですか」と質問がきたので「イスラム史です」と答えたら、「聴きたいです」と返事がきました。
後日その見知らぬフォロワーの方が、実際に講演会をセッティングして、僕を講師として呼んでくれました。そして、イスラム史について講義すると、すごくウケました。「こんな面白い話は1回だけではもったいない」ということで、それからも年に3~4回ほど公民館などで歴史について講義するようになりました。その講演会はAPUの学長になる直前までつづけ、初期は数十人だった参加者が、最終的には100人以上になりました。
その講義には編集者が来られていました。そして講演が終ったあと、その編集者に「面白いから本にしましょう」と声をかけていただいたのです。おかげで『仕事に効く 教養としての「世界史」』という歴史の本を初めて出版することができたうえ、10万部以上売れるという予想外のうれしい結果となりました。
その本がきっかけで、他の出版社からも歴史の本の執筆を頼まれるようになり、僕はいつの間にか世界史に詳しい人ということになっていました。20代の部下が僕にツイッターを指示していなかったら、数々の出版社とのご縁もなかったことでしょう。