韓国世論の「反日感情」は高まり続けている
戦後最悪の日韓関係が一段とこじれている。ソウル郊外の京畿道(キョンギド)議会では、日本企業を「戦犯企業」とみなし、その製品にステッカーを貼り付けるよう学校に義務付ける条例案が提出された。その後、この条例案はいったん取り下げられたものの、元徴用工への賠償問題に関して韓国原告団の主張は勢いを増している。
韓国の景気が減速し人々の不満が膨らむ中、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は対日の“怨み”を増幅させる世論を抑えることができない。むしろ、韓国世論の反日感情は日に日に高まっているようにさえ見える。
韓国の経済界や知日派には、この状況に危機感を持つ者が多い。その背景には、韓国経済の安定と成長のために、日本は最も重要なパートナーの一人であるとの考えがある。彼らは、朝鮮半島を含む極東情勢の安定のためにも、対日関係を重視している。
ただ、激しい世論の盛り上がりから、文政権がわが国との関係修復に取り組むことはできそうもない。今後、日韓関係は一段と悪化することが懸念される。
文氏は「日本への怨み」をくみ取って大統領に
韓国では、これまで富を公平に分配する経済システムを整備できていなかった。多くの経済資源が一握りの財閥企業に集中してしまっている。第2次世界大戦後、韓国政府は、相対的に経営基盤が整っていた財閥企業の成長を重視し、優遇することで経済の復興を実現した。
その結果、経済に占める財閥企業の存在感は圧倒的に大きくなった。サムスン電子と現代自動車の売上高を合計すると、韓国GDPの20%程度に達する。韓国のGDP成長率は、サムスン電子をはじめとする財閥企業の業績動向に左右される。これは、韓国経済の構造的な問題だ。
加えて、歴代の政権では大統領の親族などが財閥企業と癒着し、私腹を肥やしてきた。その状況に世論は不満を蓄積し、政権交代が起きてきた。文氏は、前の朴槿恵(パク・クネ)政権下でのスキャンダルへの怒りや、根強く残るわが国への“怨み”をくみ取り、大統領の座を射止めた。
政権発足後、文大統領は最低賃金の引き上げによって、世論の不満解消を目指した。しかし、経済成長という裏付けを欠いた最低賃金の引き上げは企業からの反発にあい、撤回を余儀なくされた。それに加え、世界的なスマートフォン出荷台数の減少と中国経済の減速により、輸出のけん引役であったサムスン電子の業績が急速に悪化している。