超売り手市場で増加する“踏み絵”面接

ケース面接とは、一見するとすぐには答えを出せないような問いに、フェルミ推定などを応用して論理的に回答するものを指す。「日本に電柱は何本あるか?」「スタバの売り上げを2倍にするには?」などの質問が有名だ。

とはいえ、こうした一部の動きを除けば、就活の面接で聞かれる質問は今も昔もそれほど大きく変わらず、「志望動機は?」「学生時代に頑張ったことは?」などのベーシックな質問が中心だ。ただし、質問の内容は同じでも、「どこまで深掘りして聞かれるか」についてはかなりの変化が見られる。

「今の面接では、志望動機をしつこいくらいに聞かれます。優秀な学生は奪い合いですから、企業側は『どれだけ本気でうちに入るつもりがあるか』を見極めたい。だから商社であれば、『なぜ商社を志望したか』はもちろん、『なぜ三井物産ではなく三菱商事なのか?』『なぜ伊藤忠商事ではなく三井物産なのか?』といった競合他社と比較した質問にも説得力ある回答を求められる。浅い答えしか返ってこないと、『それならうちでなくてもいいのでは?』と返ってくる。今の面接は、いわば“踏み絵”面接なのです」

踏み絵を差し出す企業に対し、学生は情報収集によって武装する。武器になるのは、実際に内定を獲得した先輩たちの就活体験談や口コミだ。これらに目を通し、企業ごとの選考内容を把握したうえで対策を立て、面接に臨む。今は志望動機の模範回答を紹介するサイトも多くあるため、「ネットで見た志望動機をそのまま答えようとしたら、隣の人がまったく同じ話をして困った」という笑えない体験談も多い。ただし北野氏は、「情報がオープンになったこと自体は、学生間の情報格差をなくすという点で悪くない」と話す。

「以前は慶應大学のように卒業生と在校生の縦のつながりが強い大学の学生だけが、先輩から貴重な情報を得ることができた。今はその機会が均等になったことで、中位校の学生でも意識の高い学生は2年生からインターンに参加して実績をつくり、本選考で上位校の学生と競い合うケースが出てきている。また、企業側も学生の口コミを参考にして、面接やインターンの内容を改善するようになった。これは採用をアップデートするという意味ではよい変化だと思います」

一部では採用選考にAIを導入する企業も現れ、「将来的には、人による採用面接はなくなる可能性もある」と北野氏。新卒採用における面接は、今まさに大きな転換点を迎えている。