「今朝、会社に来るまでに見たことや思ったことでも構いません。電車が混んでいた。寒くなったのに、まだワイシャツ姿で出勤する人がいた。話のネタは尽きないでしょう。重要なポイントは、そうした事実に自分の感情を添えることです。人間は感情の生き物であり、相手の感情に触れると親しみが湧き、話が弾むようになってきます」

そのように野口さんにいわれると、場をつなぐことがそう難しいことではないことがわかり、「相手に嫌われたらどうしよう」などという恐怖感にさいなまれることも解消される。

感情の「5S」で相手に話をさせる

場をつないでいくには、自分が一生懸命に話すだけではなく、相手に気持ちよく話をしてもらう方法だってある。むしろ、そのほうが自分で話題を探すよりも楽かもしれない。そのときに重要なのがリアクションで、司会者で話し方のセミナー講師も務める村松加王里さんは「5S」の感情を込めることの重要性を指摘する。

「5Sは、驚き(Surprise)、茶化し(Spoof)、残念(Sorry)、疑念(Suspect)、共感(Sympathy)から成ります。『そうですか』という単純な相槌ではなく、驚きの感情を込めて『へぇー、そうなんですか』といったり、ちょっと疑念の気持ちを指し挟んで『本当にそんなことがあるんですか?』とリアクションすると、相手は『実はね……』とか『ありますよ。たとえば、こんなことも……』などといいながら話を深掘りするようになるものなのです」

その繰り返しをしていくことで、相手は自己肯定感を強く持ち始め、「この人は自分のことを理解してくれている」と思うようになる。結果、今度はこちらの話にも耳を傾けてくれるようになり、話が一段と弾んでいくわけだ。

談慶さんにいわせると、「場をつないでいくコツは、いかに自分が会話の主導権を握るか」にかかっている。確かに共通言語探しにしても、映像コミュニケーションにしても、5Sにしても、主体的に自分の側から仕掛け、話の主導権を取っている。それでは具体的なシーンにおける場のつなぎ方を、3人の達人に教えてもらおう。