【会議の場】上司の詰問に対しては現状報告を逆提案
ある上司と部下の会話をご覧ください。「まず、『なぜ』という上司の方の言葉が気になりますね。『なぜ』や『どうして』の裏には“叱責”の気持ちが存在し、会話を止めてしまう言葉です。このようにいわれたら、頭のなかが真っ白になって、営業現場の映像なんか思い浮かべられず、映像コミュニケーションを活用することができません」と野口さんは指摘する。
そもそも、この会議の目的は営業現場の現状を把握し、収益をアップすること。読者のあなたが上司の立場であるのなら、「なぜ」や「どうして」という言葉を安易に使わないように注意しよう。
しかし、1度口から発せられた言葉は、決して元には戻らない。部下の立場であったら、どう切り返すべきか。
野口さんは、「問題点としていろいろなことが考えられますが、まだ整理し切れていません。これまでのA社に対する営業活動の経緯をご説明します。まずお聞きください」と、肚をくくって“逆提案”することを勧める。そうすれば上司も本来の目的に立ち戻り、「わかった、では話してみなさい」といって、一緒に問題点を考えてくれるはずだ。
談慶さんも「こういった手順を踏みながら営業してきました。あと、惜しむらくはこのポイントだけだと思います。私の立場なら、どうするかお知恵を拝借できませんでしょうか」といって、場をつなぐようにアドバイスする。「一生懸命に取り組んでいる部下や弟子から甘えられて、拒絶反応を示す上司や師匠はいません」と談慶さん。
【移動中のタクシーのなか】「ねぎらいの言葉」で沈黙もOKに
社長のお供で顧客のところへタクシーで向かっている。当日の予定の確認をしたら、後は話すことが何もない。次第に、車内に重苦しい雰囲気が漂い始めた……。
そんなときに村松さんがお勧めするのが、「B社との成約があと一息のところまできています。プッシュをお願いできませんでしょうか」などと、サポートやアドバイスを請うこと。具体的な仕事の話なら、役員は耳を貸してくれるというわけだ。
その一方で談慶さんは役員の経歴チェックという事前準備をもとに、たとえば「私の上司のB課長は新入社員のときに、役員の後輩だったそうですね。どんな感じだったのでしょうか」と尋ねてみることを提案する。
そこで指導で苦労した話を聞かされたら、「いまは私をしっかり導いてくださっていますが、役員のご指導があったからこそですね」と“よいしょ”すれば、気持ちよくなった役員は苦労話に花を咲かせ始める。そうやって上役の苦労話や愚痴を引き出せるようになると、「可愛いやつ」と思われ、距離が縮まる。
また、「ねぎらいの言葉」の活用を紹介するのが野口さんである。「お疲れではございませんか」「お考えになっていることがたくさんおありではないでしょうか」と一声かけるだけで、「あなたのことを思って黙っています」という気持ちが相手に通じるようになるのだという。口数の多いタクシー運転手に当たって、うんざりしたことがないだろうか。時には沈黙も是なのである。