【接待の場で】相手を持ち上げる「くすぐり」のコツ

関心のない人はゴルフのことをほとんど知らない。「100を切ってね」といわれても、ちんぷんかんぷん。でも、それでは相手は興ざめで、せっかく設けた接待の場の意味がなくなる。

「でも、ゴルフ好きは“教えたがりやさん”ということくらいは知っているでしょう。そんなときは『上達のコツは何ですか? テクニック、それともパワーでしょうか?』と振れば、相手の方は堰を切ったように話し始めますよ」と談慶さんは太鼓判を押す。

そして、「100を切られたのですか。それはとても嬉しいことでしょうね」と話して、相手の方の気持ちを引き出そうとするのが野口さんである。相手は「ゴルフを始めてから、ここまでくるのに3年もかかってね」などと、喜んで話をしてくれるようになる。

ただし、ゴルフの話に深入りされると、次第に辛くなってくる。そこで野口さんは、「ところで、奥さんはゴルフについてどう思っていらっしゃるのですか」と質問を挟んで、奥さんの話題にシフトするような工夫を勧める。それなら、日頃感じている奥さんに対する鬱憤など、お互いの身の上話で盛り上がるだろう。

また、村松さんが「通われているゴルフ練習場の近くにおいしいレストランがありますね」という切り返しを勧めるのも、野口さんと同じ狙いから。料理やお酒の話題に振れば、好物などで共通点を見つけられる可能性が高く、お互いに親近感を高めながら話を続けることができるようになる。

【エレベーターのなか】常に下手に回って相手に話をさせる

同期のなかで、営業成績トップで走り続けてきた自分。しかし、最近同期のCが激しく追い上げてきており、「いつか抜かれてしまうのではないか」などと、気になって仕方がない。そんなCとたまたまエレベーターで出くわした。それも乗っているのは自分とCの2人だけ。何か気の利いた言葉をかけたいのだが、なかなか出てこない……。

こんなシーンに対する回答について、3人の達人は「相手を褒めることと、教えを請うことです」と口を揃える。村松さんは「たとえば、『最近すごいよね。どうやって成績をあげたの? ぜひ教えてほしいな』といえば、相手は決して悪い気がしないもの。『そこまでいうのなら』という気持ちになって、ヒントを話し始めることが十分に期待できます」という。

「結局のところ出世する人たちの共通点は、『実る稲田は頭垂る』といわれるように、常に謙虚で下手に回っていることなのです。この場合、私なら『調子がいいようだね。将来の社長候補じゃないか。今度、営業の秘訣を教えてもらえたら嬉しいんだけれども』と話すでしょう。実際にCさんが社長になったら、自分の立場のリスクヘッジにもなりますしね(笑)」と野口さんはいう。

ちなみに談慶さんは談志師匠から、「嫉妬は自分と他人の差を悪口や妬みで埋める行為だ」と教わったそうだ。そうした悪口や妬みの言葉を聞いたら、相手は嫌な気持ちになる。ましてや自分の品位も損なうことになるわけで、厳に口を慎みたいものである。