ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は大学卒業後、ジャスコで9カ月間働いた。その時の面接官は、イオングループ創業者・岡田卓也の実姉・小嶋千鶴子だった。小嶋氏の評伝『イオンを創った女』(プレジデント社刊)を読んだ柳井氏は「今まで読んだ人事の本の中で最高の本。小嶋さんと僕は経営に関する考え方が全く一緒だ」と語る――。
ファーストリテイリング 柳井正会長兼社長(撮影=石橋素幸

人事の本では、これまでで最高の1冊

――本書をお読みいただいてありがとうございます。

著者の「東海さん」て、なんか聞いたことがあるなって思ったのだけれど、思い出しました。僕は大学を出て最初にジャスコに就職したのですが、そのときの面接官が小嶋千鶴子さんだったんです。その小嶋さんが「東海くん、東海くん」と呼んでいた。その声をね、読んでいて思い出しました。

それにしても、この本は久々の傑作だと思いました。経営とは人事のことなんです。この本は今まで僕が読んだ人事の本の中で最高の本です。だから最高の経営の本ともいえる。小嶋さんの言葉という素材が最高なのはもちろん、著者の東海さんがそれを実によくまとめている。小嶋さんは僕と経営に対する考え方が全く一緒。この本、全社員に配りたいくらいです。

小売業の経営者を超えている小嶋千鶴子

――小嶋千鶴子さんについてはどのような印象でしょうか。

これを読むと、やはり小嶋さんがイオンの実質的な創業者だなとよくわかります。小嶋さんは小売業の経営者を超えていますね。小嶋さんは実に見識が広い。その広い見識をもとに、教育者であり、クリエイティブディレクターでもあり、組織をまとめることもする。それこそ真の経営者なんだと思います。

人事というのは、人間そのものを理解しないといけないのだけれども、さらには組織と人間の関係、社会の成り立ち、未来予測といった全方位的なことを知らないかぎりできないものなんです。さらに、必要なのは厳しさと愛情ですね。小嶋さんにはそのすべてが詰まっている。

本では厳しさばかりを書いているけれど、僕の真意も同じです。読んでいて小嶋さんと僕は性格がすごく似ているんじゃないかと思います。やはり経営者はこうでないといけないと思いました。小嶋さんは本当にすごい人だと思います。