ワザあり!【7】
心の距離が縮まる「失敗談」を恐るるなかれ

失敗談など「自分を落として笑いをとること」に対して抵抗を覚える人もいるだろう。特に、雑談の相手が取引先や、自分を評価する立場の上司だったりすると「こんなみっともない話をしたら、自分の評価が下がってしまうのではないか」と心配になるのだ。

しかし、相手が引くほど突飛な内容だったり、犯罪に関係する話だったりしないかぎり、人は会話の内容だけで他人を評価したりはしない。たとえば、「地図が読めなくて、ここに来るまで3回も道を聞いちゃいました」と言われても、時間通りに到着していれば「しっかりした人だな」と感じるし、「奥さんに頭が上がらなくて」と言われても、仕事ぶりがきちんとしていれば「頼りない」とは思われないのである。

むしろ、失敗談には人の「かわいらしい一面」を引き出す力があるので、相手に「好かれたい」と思うなら積極的に話したほうがいい。相手の緊張をほぐし、親しみを感じてもらう意味でも有効だ。中でも、既婚男性の「奥さんの尻に敷かれている話」や、アラサー独身女性の「ちょっとモテない話」などは、共感を持って聞いてもらえるテッパンネタだと思っていいだろう。

「この人がこんな失敗を!」という驚きは、好感を持って受け入れられることが多い。後輩に慕われたい上司も積極的に話そう。
ワザあり!【8】
共感できる「プチ怒りネタ」で一体感を醸成せよ

「私ネタ」の中でももっとも場が盛り上がるのは、日常で感じた「ちょっとムッとした話」「悔しかった話」である。それらは「あるあるネタ」の中でも特に強い共感を誘う感情なので、いったん「わかる!」と共感されれば、相手からもどんどんエピソードが飛び出すだろう。「ひどいね」「悔しいね」と共感し合えば、興奮度も高まり、一体感も醸成される。

もちろん、あまりにも「プチ怒りネタ」ばかりが続けば、「割と怒りっぽい人だな」「愚痴っぽいな」と評価されてしまうかもしれないが、笑えるレベルさえ保っていれば、品格に傷がつくことはない。「ちょっと聞いてくださいよ。こんな腹の立つことがあったんです」と話しかければ、どんな「プチ怒り」で共感を誘ってくれるだろうかと、相手も期待して話を聞いてくれるはずだ。

ただし、途中で曖昧な相づちを打たれたら、それは「あまり共感できない」「これ以上踏み込んでほしくない」という相手からのサインだ。深追いせず、さっさと話を切り上げよう。雑談は、後味の良さが肝心。ある程度ネガティブな話題の場合、相手の反応には敏感に。引き際を見極めるのも大切なことなのである。

家族や共通の知り合いの話は、共感を誘う「プチ怒りネタ」の代表格。逆に、同じ部署の人への愚痴などは控えたほうが無難だろう。
野口 敏(のぐち・さとし)
グッドコミュニケーション代表取締役
TALK&トーク話し方教室主宰。著書に、90万部超のベストセラー『誰とでも15分以上会話がとぎれない!話し方』シリーズほか、『誰とでもスッとうちとけて話せる!雑談ルール50』など。
(文=大高志帆 撮影=藤木潤一 写真=iStock.com)
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