卓越した数字を残している営業職の女性は、どんな工夫をしているのか。今回、4社の敏腕セールスに「話す&聞く」技術を聞いた。第3回は、大和ハウス工業の田中紗也子さん――。

※本稿は、「プレジデントウーマン」(2018年10月号)の掲載記事を再編集したものです。

全国でわずか2人。女性店長の底力

2006年に大和ハウス工業に新卒入社し、戸建て住宅の営業を続けてきた田中紗也子さんは、17年4月から大津プリンスホテル住宅博展示場店長を務めている。

田中紗也子(たなか・さやこ)さん●仕事服はシンプルに白シャツ、セットアップのパンツスーツ、ヒールが多いです。男性が多い職場ですから、女性らしさを出すよりは、男性の担当者と同じように見えるほうがいいと思っています。ピアスもネイルもしません。

もともと住宅や不動産の仕事は男性営業社員の多い職場だ。同社でも田中さんが入社した頃から女性の積極採用を始めているとはいえ、全国に約200カ所以上ある展示場のなかで、現在でも女性の店長はわずか2人しかいない。

パンツスーツに白シャツと、キリっとした姿。「前の上司が男性営業社員と区別なく指導してくれたので、今があります」と、堂々と話す田中さんだが、実は根っからの人見知りだという。

「普段は知らない人に話しかけるなんてとてもできません。でも、シャツとスーツを着用することで、一気に仕事モードに気持ちが切り替わるんです」

住宅購入は生涯で一番高い買い物という人がほとんどだろう。そのため、住宅展示場来場者の多くは複数の展示場を回ったり、数社に見積もりを依頼して検討する。また、2世帯で暮らす家を建てるときは、意思決定者が複数人いて、意見がまとまりにくいことも多い。さらに、依頼者が土地を持っていない場合は土地探しからスタートするため、付き合いが長期になるなど、多くの高い壁をクリアして、やっと契約にこぎつけるのだ。

1回目の対応時に、どんな話をすべきか

来場者に自社商品を選んでほしいとき、あなたなら最初の接客時にどんな対応をするだろうか。自社の住宅の説明を余すところなくして、他社の住宅より勝る面をアピールしていくだろうか。

田中さんの場合、「『今すぐに買いたい』というお客様以外は、ほとんど打ち解けるための世間話をする」という。

「担当者に嫌悪感を持つと、他社も検討されているお客様に戻ってきていただくのは難しいんです。お客様によって、家を建てたいタイミングは違います。『今すぐ建てたほうがいい』と畳みかけ、自社の商品説明に終始してしまうのは逆効果です。まずは『住宅購入について、将来的にどうお考えですか』といった問いかけをして、お客様の状況やニーズを把握します」