対応した客が心を開いてくれないときは
田中さんがすごいのは、こうした初回の1時間程度のやりとりのなかで、「来場者の価値観を揺さぶる」ことだ。
例えば、「ハウスメーカーより地元の工務店のほうが安い」と考えている来場者には、なぜ値段の差があるのかを説明する。イメージだけで「木の家がいい」と考えている場合は、鉄骨住宅の良さも伝える。
「ライバルを否定はしません。『その選択肢もいいですね』とお伝えしたうえで、お客様がほかの情報をお持ちでないことも多いですから、弊社の強みをお伝えしていきます」
こうすることで、「コストを抑えすぎると数十年後に建て直しが必要になることもある」「木材の場合はシロアリ対策が必要になる」など、来場者の住宅への考え方が変わっていくことも多いという。結果、比較検討するライバル会社の数が減っていくのだ。
しかし、すべての来場者が最初から田中さんに心を開いているとは限らない。来場者には最初に家づくりなどについてのアンケートに答えてもらうが、それに名前も書かないくらいガードが固いタイプもいる。
「そんなときには、私自身の話をすると、だんだんと打ち解けてくださることもあります。まずは1時間だけでも話をしてみます」
とはいえ、田中さんはどの来場者に対しても同じように時間をかけているわけではないという。
「お客様の住宅に対する価値観によっては、そもそも弊社の考え方と違う方もいらっしゃいます。そうした場合は、お時間をとらせないように初回でその旨をお伝えします」
最も大事なのは、引き渡し後のお付き合い
繰り返し商談を重ね、晴れて契約・住宅が出来上がっても、そこで終わりではないのだと田中さん。
「本当のゴールは、周囲に紹介してもいいと思えるぐらいご満足いただくことなんです。弊社の戸建て住宅を選ばれて何度も建て替えるお客様はほぼおりません。しかし、ご満足いただいているお客様は、新たなお客様をご紹介くださるのです」
「住宅に満足している。そしてこの担当者なら自分の大切な友人を紹介できる」。顧客にそう思ってもらえるからこそ、次の契約に結び付く。