家庭や家計のことで悩んだときに、どんな解決策をとればいいのか。評論家の本田健氏とファイナンシャルプランナーの深野康彦氏。2人の達人に、5つの「場面別」でアドバイスを求めた。第2回は「貯金が少なくて将来不安」について――。(全5回)

※本稿は、「プレジデント」(2017年3月20日号)の掲載記事を再編集したものです。

【QUESTION】貯金が少なくて将来不安

本田の答え:松下幸之助さんは50歳で負債70億。貯金があるだけで、すごい

お金がなくて悲観する必要はない

私が尊敬する松下幸之助さんの話をします。松下さんは9歳から働きはじめて、50歳くらいまでに700万円(今の価値で200億円)もの資産を築いていました。ところが1943年、軍から飛行機と船をつくるよう命じられた。しかも国にはお金がないからお金を立て替えてほしいと頼まれて、松下さん個人のお金で広い土地を買い、大きな工場をつくりました。しかし翌々年には終戦、「お金は全部返す」と約束したはずの軍の偉い方は自殺。現在の価値で200億円の資産家だったはずの松下さんは、戦後、70億円の負債を抱えてしまった。

写真=iStock.com/Tomwang112

踏んだり蹴ったりの人生ですが、その後はご存じのとおり。松下電器は快進撃を続け、94歳で亡くなるまでに、松下さんは日本で一番のお金持ちになられました。

そう考えたら、50歳で貯金があるというだけでもすごい。大富豪なんです。今から亡くなるまでざっくり数えて30年、ずっと働き続けてお金を稼いでもいい。だから今、お金がないだなんて、悲観する必要は全くありません。

自分の才能を、世の中にどう提供していくか

そもそも、出るお金も入るお金も、小さく考えすぎているのだと思います。お金というものは、「自分が世の中に提供した価値と世の中から受け取った価値の差額」です。だったらより多くのものを世の中に提供すれば、より大きなお金を手にできます。ですから、これからの数十年、どうやって世の中に自分の才能を提供していくか、どうやってそれをお金に換えていくか、それこそを考える必要があると思います。