終盤を迎えた自民党総裁選。勝利が確実視される安倍晋三首相の陣営が、さらに支持を増やすため、石破茂元幹事長を支援する側に「恫喝」をしたことが明るみに出ている。「石橋をたたく」ならぬ「石破氏をたたく」という徹底ぶりだが、なぜそこまでやるのか――。
2018年9月17日、東京・銀座で街頭演説する自民党の石破茂元幹事長(右)と佳子夫人(写真=時事通信フォト)

神戸市議に「圧力」をかけた官房副長官の真意

自民党所属の神戸市議が9月10日夜、自身のフェイスブックに書き込んだ内容は一瞬にして永田町で話題になった。まず書き込みを紹介しておきたい。

元々私は2012年の総裁選では安倍選対で闘った経緯もあり、今回の総裁選も安倍総理を応援していました。
しかし、官邸の幹部でもある、とある国会議員から、露骨な恫喝、脅迫を私達地方議員が受けており、最早地方議員の人格否定ともいえる状態になったため、私達神戸市議、兵庫県議有志は、石破茂候補を応援する決意を固めました。
愛する自民党を守るためにも、党の草の根、土台とも言える私達地方議員が攻撃されるという異様な総裁選を、これ以上許してはなりません。

地元・神戸新聞の報道などによると、神戸市議らに安倍氏の支持を強く求めたのは兵庫県9区選出の衆院議員西村康稔官房副長官。FBに書き込んだ市議以外も同様の「被害」を受けているという。

岡田裕二・神戸市議のフェイスブックから

自民党総裁選は首相の座を争う最高レベルの権力闘争だ。あらゆる権謀術数が飛び交うのは常識。これまでの総裁選でも、脅しまがいの働きかけをするのはさほど珍しいことではなかった。

しかし、働きかけをしたのが西村氏だったとしたら、少し事情が違う。西村氏は官房副長官として安倍氏を支える側近中の側近。今は関西地方を襲った台風21号や、北海道地震の復旧作業の先頭に立つ。自身のツイッターでも災害対応に全力を挙げているつぶやきが続く。その最中に総裁選で「圧力」をかけていたということになれば、安倍政権が災害復旧に全力を挙げる姿勢は見せ掛けだけという印象を与えかねない。

西村氏といえば、7月5日、西日本豪雨が近づいている中で自民党が開いた宴会「赤坂自民亭」の写真をSNSでアップし、大顰蹙をかったことも記憶に新しい。