石破派大臣に「辞表提出を」と迫る

他にもある。石破派の幹部・斎藤健農水相が14日、千葉市内で行われた石破氏支援の会合で爆弾発言をした。安倍氏を支持する議員から「石破氏を応援するなら(大臣の)辞表を書いてからにしろ」と恫喝まがいの圧力を受けたというのだ。斎藤氏は「ふざけるな。(安倍氏は自分が)石破派と分かってて大臣にした。俺が辞めるのではなく、クビを切ってくれ」と言い返したことも明らかにした。

圧力をかけた議員の名前は明らかになっていない。しかし、この「恫喝」まがいの発言が事実なら、安倍氏と違う候補を押す場合は閣僚や党役員の役職を辞めなければならないことになる。それでは総裁選の行方に関わらず党は分裂状態になってしまう。

安倍晋三首相らが7月5日夜に参加した懇親会「赤坂自民亭」の集合写真。西村康稔官房副長官のツイッターより

安倍氏は「昔はもっと激しかった」と反論

この問題は17日、民放テレビの報道番組に安倍、石破の両氏が出演した時もとりあげられた。石破氏は「誤った発言。党のためにならない」と批判。安倍氏は、斎藤氏に辞任を迫った議員の実名が誰なのか明らかにするよう求めたうえで「昔はもっと激しかった」と反論した。

討論では憲法やアベノミクスなども話題にのぼったが最もヒートアップしたのが、この「恫喝」問答だった。さわやかな政策論争で党勢拡大をするという当初のもくろみからはかけ離れた展開となってしまっている。

安倍氏は、どの議員よりも総裁選の票読みを厳しく見ており、ゆるみの引き締めに躍起になっている。このことは8月15日にアップした「安倍首相が“3選圧勝”に執念を燃やすワケ」で紹介した通りだ。「何をそこまでやるのか」という意見もあるのだが、これが安倍流。批判を受けながらも「1強」の体制を築き上げ、長期政権を実現した原動力でもある。

一連の「恫喝」も、安倍氏が直接指示をしたのではなく、安倍氏の総裁選に向けた執念をみた側近議員たちが「忖度」して行ったのだろう。

そういった経緯はあるにせよ、選挙戦での安倍氏サイドの動きが、自民党内に不穏な空気を増長させているのは否定できない。選挙で安倍氏が勝ったとしても、党内の亀裂が広がり3選前よりも政権運営が厳しくなる可能性もある。