自民党総裁選で3選を目指す安倍晋三首相。毎日のように党所属国会議員や地方議員と会い、支持取り付けの依頼に余念がない。「3選確実」と言われる情勢の中、「ここまでやる必要があるのか。横綱相撲を取ればいいのでは」という声もチラホラ聞こえる。それでも当の安倍氏は耳も貸さず、会合を続ける。その理由は、今年が「戌(いぬ)年」だから。安倍氏が忘れられない「12年前の圧勝」と「11年前の惨敗」とは――。
囲む会で気勢を上げる安倍晋三首相(中央)ら=8月11日午後、山口市(写真=時事通信フォト)

なぜ現職の首相が「どぶ板選挙」に徹するのか

安倍氏の地方議員との懇談は、執念すら感じさせる。8月9日、「原爆の日」の式典出席のため長崎に出向いた時は、式典や被爆者との懇談の後、長崎空港で地元の党県連会長らと懇談。翌10日は、公務の合間を縫って、党石川県連の国会議員、県議団と昼食会談を行った。その後、首相公邸から官邸に場所を移し、梶山弘志茨城県連会長と会っている。

新たに総裁の座を目指す挑戦者ならいざ知らず、現職の首相の運動とは思えないような「どぶ板」選挙。安倍氏がここまで、きめ細かな運動を行っているのは、誰よりも厳しい票読みのもとで必勝を期しているからだ。

7月、西日本豪雨での政府の対応が後手に回り批判された頃は、地方議員らとの会合は極秘裏に行う「ステルス作戦」をとっていたが、最近は禁を解き、堂々と会合を繰り返している。このあたりの事情は既報の「安倍総裁3選を阻止するただひとつの方法」「“だったら密談でやる”安倍首相の開き直り」で詳しく説明した通りだ。

地方議員らと細やかに会い支持を求める選挙に徹しているのは、他にも理由がある。それは今回の総裁選が「戌年」に行われるからだ。