「よいことをすればよい報いがある」

あるときは、アロマセラピーに詳しい元患者さんがワークショップを開いて後輩のがん患者さんに教えていました。その様子を見てわかるのは「人のために」というモチベーションの強さです。私も、読者がいなかったらブログの更新すら続けられません。会社で「人のために」働く実感が持てないなら、ボランティアに参加するのも副業を持つのもいいと思います。

「人のために」働くと元気になる。それは医学的にも正しいことです。「人のために」働くとオキシトシンという「愛情ホルモン」が分泌され、幸せを感じたり、健康維持や免疫を高める効果があることがわかっているのです。

仏教に「因果応報」という言葉があります。よく知られているのは「悪い行いをすると悪い報いがある」という意味。しかし反対に「よいことをすればよい報いがある」というのも、また事実。人のために働くことは、自分のために働くことでもあるのです。

「宗教学」を学び、心の不安をとる
保坂氏は59歳のとき、高野山大学大学院で空海について研究し、「マインドフルネス瞑想」のうつ病や心の不安に対する有効性を知った。
●空海
「空海はうつ病で、その克服にマインドフルネス瞑想が有効だった」と保坂氏は推測する。
●マインドフルネス瞑想
「今、この瞬間」の体験に意識的に目を向けることで脳を休めるストレス対処法。「瞑想」などを通じて体現できる。一時的に脳の機能を停止させることができ、脳の疲れを取る。その結果、「集中力アップ」や「パフォーマンスの向上」にもつながる。
「あきらめていたこと」を書き出し、「小さな山」をつくる
シンガーソングライターになることが夢だったという保坂氏。現在は診療室にピアノを置き、もう1度夢を追いかけ始めた。
「心理学」を学び、物事を別方向から見る訓練をする
例えば「リストラ」。「今までの仕事ができなくなる」という面もあるが、見方を変えると「好きな仕事に就ける時間ができた」と捉えられる。ものの見方をいい方向に変えられるようになるには、心理学が有効。
保坂 隆
精神科医
1977年、慶應義塾大学医学部卒業。東海大学医学部精神科学教授、聖路加国際病院リエゾンセンター長を経て、2017年から保坂サイコオンコロジー・クリニック院長。聖路加国際病院診療教育アドバイザーも兼務。『空海に出会った精神科医』など著書多数。近著に『図解 50歳からの人生が楽しくなる生き方』がある。
(構成=東 雄介 写真=PIXTA)
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