小さくてもいいから、登れる「山」をつくる

私は57歳で精神科医から精神腫瘍科医に“転職”し、59歳で大学院に。その後、聖路加国際病院を定年退職したのを機に現在のクリニックを開業しました。

定年後、顧問などの形で聖路加に残る、年金生活を送るといった選択肢もあったかもしれません。でも60歳前後になると、先の見通しがたつようになります。山頂から下のほうを見下ろしている感じ。見えている道を下っていくだけではつまらない。小さくてもいいから新しい山をつくり、もう1度登る喜びがあってもいいじゃないですか。

それこそ、そば打ちでもピアノ演奏でもいいと思います。あるいは、若い頃あきらめたことをやり直してみる。60歳を過ぎてから新しい山に登るのは、スリリングで骨が折れることのように思われるかもしれませんが、こうしたワクワクやドキドキこそ、若さを保つ秘訣です。

ヒヤヒヤを全部ワクワク・ドキドキに変えてしまう方法があります。人生にはさまざまなイベントが発生します。ネガティブなイベントもある。でも、ある方向からはネガティブでも、別の方向から見るとポジティブに見えてくる。こっちから見るとヒヤヒヤ、あっちから見るとドキドキ・ワクワク。ひとつの事象を別の視座から眺められれば、いつでもドキドキ・ワクワクしていられるのです。

異動になって理想のキャリアパスから外れた。一見ガッカリすることかもしれない。でも、これを「新しいチャンスを与えられた」と見ることができれば、ドキドキ・ワクワクに変わります。