単に「聞く」のではなく、全身で「聴く」こと
アート引越センターの法人営業部門で営業成績8年連続トップを収めた谷内辰徳氏(33歳)。
「アートは知名度が高いので営業をすれば1度は会ってくれます。しかし、そこからが勝負。単に安さを売りにすると他社との値下げ競争が始まり、長期的な取引につながりにくくなります」
谷内氏が重視したのは、担当者との信頼関係を築く雑談コミュニケーションだ。引っ越し業務を担当するのは大手企業の人事総務部。一日中オフィスでパソコンを触っている女性たちは谷内氏曰く「退屈している」。そこで引っ越し業務と関係のない雑談をして会う回数を増やすことに注力したという。
「たとえば、指輪をつけている担当者ならば、子どもの受験の話題を振ったり、職場の人間関係の話を聞く。すると上司の愚痴を言いたいために私と会ってくれる女性が増えました(笑)。クライアントのカウンセラーになるのです」
とはいえ、単に話を聞くのではなく、そこにも谷内氏流のコツがある。
「私は『聞く』ではなく『聴く』ことを意識していました。『聴く』は耳に加えて心という字が入っていることからもわかるように、うなずくタイミングから表情まで相手の話題に合わせることを意識して全身を使う態度です」
こうして1時間ほど雑談をして話を終えようとすると、すっかり心を開いたクライアントはむしろ谷内氏に営業を求めるようになるのだとか。
「『あれ? 引っ越しの話はしなくていいんですか?』と聞かれたらパンフレットを渡すだけ」だという。