線形近似は、実際に計算するのは難しいが、パソコンに入っているエクセルを使えば簡単だ。手順は次のとおりである。

(1)販売実績をまとめた表を用意する。(2)表の範囲を選択し、「挿入」タブの「縦棒」を選択すると、AさんとBさんの実績が棒グラフで表示される。(3)Aさんの棒グラフを選択し、棒グラフ上で右クリックして、「近似曲線の追加」を選択する。(4)その中から「線形近似」を選択すると、Aさんの販売実績を表す「線形近似」が表示される。(5)線の「幅」「透明度」「終点矢印の種類」を見やすくなるように調整する。(6)Bさんの棒グラフについても同様の作業を行う。(7)目盛り線や凡例などをアレンジして見やすく整える。以上である。

ちなみに、今回は棒グラフを使ったが、折れ線グラフでもかまわない。同様の手法で2本の矢印を重ねることで、同じ効果を発揮する。

最後に1つ注意点がある。私も会社員時代によく線形近似を入れたグラフを会議やプレゼンなどで使ったが、上司や経営者がデータの意味を自分で読み解きたい場合は、今回の線形近似を含めた近似曲線のようなものはあえて入れないようにした。なぜなら、こちらのメッセージを加えてしまうと、思考の邪魔になるからだ。

プレゼンで「私はこう理解している、考察している」と明確に伝えたいときに線形近似は効果的だが、相手がそれを欲していない場合は逆効果になる。そのグラフに自分のメッセージが必要か否か、相手が何を求めているのか、ケース・バイ・ケースで見せ方も使い分けることが大切だ。

深沢真太郎
BMコンサルティング代表
「ビジネス数学検定」日本最上位1級(AAA)。企業研修や大学講座で延べ6000人以上にビジネス数学を指導。『そもそも「論理的に考える」って何から始めればいいの?』など著書多数。
(構成=田之上 信)
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