前期の売上高は4200億円と過去最高だったアイリスオーヤマ。成長の源泉は「企画力」にある。同社は売り上げの5割以上を発売3年以内の「新商品」とする目標を掲げ、直近では64%が新商品だった。そのため年1000点以上を新規投入している。なぜアイデアが尽きないのか。「プレジデント」(2018年7月30日号)の特集「できる人の資料術」では、大山健太郎会長に「企画術」の秘密を聞いた。記事の一部をお届けしよう――。

企画書の必須項目は、ユーザーの「不満点」

企画書について1つ申し上げると、企画書は稟議書ではない、ということです。

社員が出した企画書をチーム長が見て、課長が見て、部長が見て……段階を踏むことに意味があるのか。情報は伝達すればするほど先細ってしまいます。最初のアイデアの尖った部分が、段階を踏むことで丸くなってしまう。

当初はユーザーの不満を拾い上げていたのに、いろんな上司の考え、部署や会社の都合が入り込んでしまう。ならば、最初から社長を含めてさまざまな立場の人間が同じ場で意見をぶつけあい、検討する機会があればいい。それが弊社の新商品開発会議です。

アイリスオーヤマ会長 大山健太郎氏

毎週月曜の新商品開発会議では、私をはじめ、開発はもちろん、営業系、製造系、特許、品質管理など、さまざまな部署の幹部がいる。近年はテレビ会議システムでも参加できるようになり、海外も含めて約10画面を繋いで、経営陣や各部署の関係者約70人が参加して、情報を共有します。

30年不変の会議スタイル

新商品開発会議では、出される企画がたくさんあるので、ひとりあたりのプレゼン時間は2~3分。企画書はA4・1枚です。「ワンページメモ」と呼んでいますが、弊社のこのスタイルはおよそ30年変わっていません。プレゼンというと、いろいろとグラフや資料をつけたくなるものですが、ひと目で結論がわからない資料は赤点です。

提案に大事な結論とは、その商品が「すべてのエンドユーザーにどんな利便性があるのか」ということ。企画書には、商品名、市場売価と併せて、「コンセプト」「不満点」「商品特長」を書くわけですが、まず見つけるべきは「不満点」です。ユーザーが「不満だけど仕方がないな」と思ってしまっている、いわば「常識」をひっくり返せるアイデアが大事なんです。