「企画が出てこない」「考えられない」。そんな悩みを抱えているからといって、会議室でウンウンとうなるのは逆効果だ。「ガースー」の愛称で知られるテレビプロデューサーの菅賢治氏は「会議室で企画が出たことなんてない」と断言する。ブックライターの上阪徹氏が「企画の達人」の思考法を紹介する――。

※本稿は、上阪徹『企画書は10分で書きなさい』(方丈社)の内容を再編集したものです。

デスクの上でうなっていてもムダ

企画の達人ともいうべき人たちに、私はありがたいことに、20代の頃からたくさん取材させてもらってきました。もちろん興味があったのは、この人たちはいったいどうやって優れた企画を出してきたのか、ということ。ところが、私は意外な話をたくさん耳にすることになったのです。

写真=iStock.com/Terminator3D

今もよく覚えているのが、斬新なアイディアで作品をさまざまに生み出していた、世界的に著名なアーティストへの取材でした。アーティストはきっと、大変な思いをして、アイディアや企画を生みだしているのだとばかり思っていました。

しかしながら、出てきた答えは、びっくりするものでした。企画は、デスクの上でウンウンうなって出てくるものではない、というのです。そうではなくて、スタッフといろんなコミュニケーションをしていくことで生まれていくのだ、と。

どういうことなのか。脳の奥底にはたくさんのキーワードが眠っているのだそうです。それをうまく引っ張り出すことができれば、一人でもアイディアは生み出せる。しかし、デスクでウンウンうなったところで、それは簡単にできるものではない、というのです。

ところが、誰かとディスカッションしたり、コミュニケーションしたりしているうちに、何かの言葉がトリガーになったりして、脳の奥底に眠っているキーワードが引っ張り出されてくる、というのです。

デスクの上でウンウン考えないアーティスト
  
一人で脳の奥底からキーワードを引っ張り出せない
  
誰かと会話することによって、それが出てくる

だから、彼の企画はスタッフとのディスカッションによって生まれていたのでした。何人かのメンバーで集まって、いろいろなディスカッションをしていく。ああでもない、こうでもない、といろいろな話をしていく。そのときに、何かの言葉が脳の奥底に眠るキーワードに反応するのです。

ランダムに多方面の会話をする

いわゆるブレーンストーミングに近いのかもしれませんが、私の記憶が正しければ、こんな話をしていたことを覚えています。アイディアをひねりだそうというブレーンストーミングのような堅苦しいものではなく、もっとリラックスして多方面にあれやこれやといろんな話をしていくのだ、と。

ブレーンストーミングのような目的的なものではない
  
もっとランダムに多方面の会話をしていく

大事なことは、脳の奥底に眠るキーワードが引っ張り出されてくることです。それはそのままジャストアイディアではないかもしれない。しかし、企画の「素材」のひとつになることは間違いないのだと思います。