毎年の同窓会の話題が少しずつ変化してきた。数年前まで子どもの教育一色だったのに、50代が見えてきた昨今、「母親が弱ってきちゃって……」といった話題が交ざるようになってきたのだ。そんなとき私は、割合得意になって話す。なにしろ実父と義父が仲良く同時期に要介護状態になって15年。どちらとも同居していないが、さすがにこれだけ長いと耳年増になる。

「『特養』と『老健』の違いはね……」などと初心者の疑問に答えるのが私の役どころなのだ。

本書は、こんな私の「介護わかった気分」を粉砕した衝撃的な一冊だ。第一部では、男の介護体験記として4つのエピソードが語られる。定年を前に妻がアルツハイマー病を発症した夫。姉たちとせめぎ合いながら末期癌の父を介護する末っ子長男。まだ30代だった妻が交通事故で寝たきりになってしまった男性。なかでもショッキングなのは、赴任先のオランダで夫人が卵巣癌を患ったケースである。慣れない異国での治療、子どもたちとの緊張関係。最後に夫婦が選択したのは現地で合法化されている「尊厳死」だった。あらかじめ決めた「その日」。通常の約6倍のモルヒネを投与し、妻に別れを告げた夫の気持ちはいかばかりだったか。