※本稿は、角田陽一郎『運の技術 AI時代を生きる僕たちに必要なたった1つの武器』(あさ出版)の一部を再編集したものです。
さんまさんの恐ろしい洞察力
明石家さんまさんは、よく「頭がいい」と評されますが、そこには2種類の「頭がいい」があります。
ひとつは、視聴者に見せる頭のよさです。たくさんの芸人や俳優や文化人を相手にしての神業的なトーク回しや、天才的な切り返し。ものすごく頭の回転が速い、ものすごく脳の運動神経がいい人でないと、あんなことはできません。
そしてもうひとつは、視聴者に見せない頭のよさ。
僕はどちらかと言えば、こっちの面で、さんまさんは、僕がお会いした人のなかで一番頭のいい人だと思っています。
それは、「何かを理解してもらうのに、説明量が圧倒的に少なくてすむ」からです。
さんまさんは、説明しなくてもわかる人。番組の企画書を見せて「これ新しい企画です」と言うと、僕らスタッフがほとんど何も説明してないのに、ちらっと企画書を一瞥して「ふーん、○○やろ」。これが毎回、企画のど真ん中をついています。
一度、「なんで企画の狙いがわかったんですか?」と聞いたら、「お前らの考える企画なんて大体そんなもんやろ」と言われました。恐ろしい洞察力です。
売れっ子は最小の情報で理解する
どんな環境でも、言ったことを全部笑いにしてしまう天才・ザキヤマ(山崎弘也)さんも、説明しなくてもわかってくれる人です。「今回この番組は、これこれこういうノリです」なんていちいち説明しなくても理解してくれる。さすがです。
ディレクターが若手であればあるほど、演者さんに企画を細かく説明しようとします。司会の進行がこれこれこうで、このタイミングで入ってきていただいて、など。でも売れているタレントさんは頭がいいので、そんなこと説明しなくてもわかっています。
だから売れているタレントさんに対する僕の説明は、必要最小限。「コンセプトは○○です。VTRを見ていただきますが、おもしろくなかったら笑わなくていいですよ」とかなんとか。彼らは「そうか、角田は今回のVTRに自信があるんだな」と理解してくれる。さんまさんには、その最小限の説明すら、必要ありませんが。
結局、「頭がいい」というのは偏差値や知識の量ではなくて、本質的には「洞察力」や「想像力」なのではないでしょうか。