※当記事は弁護士ドットコムの提供記事です(初出は5月18日)
日本大学アメリカンフットボール部の選手による悪質な反則が、波紋を投げかけている。5月6日、都内で行われた関西学院大との定期戦、DL(ディフェンスライン)の選手がパスを投げ終えて無防備な状態の関学大QB(クオーターバック)の選手に背後から強烈なタックルをして、右膝軟骨損傷、第2・第3腰椎棘間靱帯(きょくかんじんたい)損傷のケガを負わせた。
関学大は日大に抗議文を提出したものの、回答書では監督の指示はなかったとされ、真相解明を求め再回答を要求。日大アメフト部は5月17日、内田正人監督らが直接謝罪に出向く考えを示したが、騒動は簡単には収まりそうにない(編集部注:5月19日には内田監督が選手や保護者に対して謝罪。その後に辞意を表明した)。高校・大学とアメフト部に所属し、現在もアマチュア選手として活動する間川清弁護士は今回の悪質な反則に対して「犯罪が成立する」と厳しい見解を口にする。(ジャーナリスト・松田隆)
正当行為と認められるか
問題のシーンは関学大の攻撃の1プレー目。関学大QBがパスを投げ終わった後、背後から日大DLが全力でタックルした。映像ではパスを投げた約2秒後、付け狙うように走ってきた日大DLがタックルに行く様子を確認できる。
この反則をめぐっては、犯罪が成立する可能性があるかどうかが論点のひとつとなる。例えば、ボクシングは相手を殴打するものの暴行罪(刑法208条)に問われない。暴行罪と同じ行為をしていても、正当な業務(同35条)のため違法性がないからである。正当な業務(正当行為)と認められない場合には犯罪が成立することになる。
1991年には、他大学の日本拳法部の学生が、退部の意思を示していた部員に防具を着用させた上で顔面を殴打して死に至らしめた事件が発生。「スポーツの目的でルールを守り、相手の同意の範囲内」という判断基準に照らして正当行為を認めず傷害致死罪の成立が認められた。
さらに、内田監督の指示の有無も重要だ。日大は意図的な乱暴行為の実行を教えることはないとして、関学大への回答書で、「今回、指導者による指導と、選手の受け取り方の乖離が問題の本質」と明確に否定した。しかし関学大の鳥内秀晃監督は「選手の受け取り方が乖離していると思うのであれば、すぐに選手をベンチに戻し『そういうプレーをしろと言ったのではない』というのが、なぜできなかったのか」と5月17日の記者会見で怒りを露わにしている。