今回の法的な問題について、大学時代にWR(ワイドレシーバー)として活躍し、日大とも対戦したことがある間川弁護士とのやりとりは以下の通りだ。
指示があったなら、監督にも傷害罪が成立する可能性
――今回の反則の映像を見て、どういう印象を持ちましたか
非常に悪質、あり得ないタックルという印象を持ちました。パスを投げ終わった後のQBへの接触はかなり重い反則です。止まれずにぶつかった場合でも取られますが、自分からタックルに行くことなど通常あり得ません。ディフェンスも重い反則と分かっているから、QBがボールを離したら、ぶつからないための訓練をしています。それが投げ終わったQBを追いかけて、2、3秒後にタックルというのが、明らかに故意があります。
――あのようなプレーを見たことがありますか
高校、大学、社会人とやってきて、NFLも見ていますが、あそこまで露骨なプレーは見たことがありません。
――あのようなタックルを受けた場合の衝撃はどのような感じでしょうか
タックルされて骨折したことがありますが、生身の体に大きな車がぶつかったような感じでした。選手たちの間で「今のは事故みたいだった」と言ったりします。関学大のQBはすごい衝撃だったと思います。両膝ついて、のけ反ってボーンってバウンドしていましたから。よくあれだけで済んだなと思います。背骨が折れてもおかしくありません。また、首に力を入れていないので頭がすごく振られており、頸椎もねんざや、折れる可能性があったように思います。
――犯罪が成立すると考えますか
明らかに正当行為の範ちゅうを逸脱した行為なので、違法性は阻却されないでしょう。腰の捻挫という傷害が発生し、実行行為としてタックルをして違法性阻却もされていないので、傷害罪(204条)が成立すると思います。
――日大は昔から、あのようなプレーが多かったのでしょうか
私たちのころは篠竹(幹夫)監督(故人)でしたが、当時の日大はダーティーなプレーはありませんでした。監督がご存命だったら、こんなことは起きなかったように思います。
――内田監督の指示の有無が取りざたされていますが
指示があれば共謀共同正犯が成立し、監督にも傷害罪が成立し得るでしょう。体育会の世界において監督の力は絶対です。真実は分かりませんが。
――悪質なファウルの後、内田監督は選手をベンチに下げませんでしたが、その不作為を法的にどのように評価されますか
そのプレーを容認しており、事前の共謀を推認させる間接証拠となりうるのではないでしょうか。
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間川清(まがわ・きよし)
弁護士
1978年生まれ。中大附属高・中央大で体育会系アメリカンフットボール部に所属。25歳で司法試験合格後、勤務弁護士を経て現在はセントラル法律事務所を経営。社会人アメリカンフットボールチームに所属する傍ら労働事件、損害賠償事件、相続事件、離婚家事事件、刑事被告人弁護など、多数の弁護士業務に従事。「ホンマでっかTV」「あさイチ」などテレビラジオ等のメディア出演も多い。著書に『うまい謝罪』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『気づかれずに相手を操る交渉の寝技』(WAVE出版)などがある。3月まで埼玉のクラブチームで現役選手としてプレーし、現在は香川でプレー先を探している。
【プロフィール】
松田隆(まつだ・たかし)
1961年、埼玉県生まれ。青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。主な作品に「奪われた旭日旗」(月刊Voice 2017年7月号)
ジャーナリスト松田隆 公式サイト:http://t-matsuda14.com/